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(391)余の辞書に…

 「余の辞書に“不可能”という字はない」と言ったのは、かの有名なナポレオンだそうだが、社会人になって以来30年、わたしの辞書からは『大型連休』という言葉が消えた。

 なにせ水族館はサービス業。世間さまがお休みの時こそ書き入れ時で、三重県の鳥羽水族館に勤務していたころはゴールデンウイークはもちろん、盆や正月も休みどころか全員出勤。時には時間を延長して押し寄せるお客さまに対処したものだ。

 さすがにエビとカニの水族館では時間延長までには至っていないが、それでも5月の連休は1日に800〜1000人が訪れ、1年間で最も多い入館者数を記録する。そのため、たとえスタッフが普段交代で取る公休日に当たっていても、この日ばかりは出勤しなければならない。

 まあ世間一般の連休に行楽地へ出掛けても混雑しているだけだから、むしろ平日に代休を取る方が好都合と言えば好都合なのだが、おかげで、娘が小さいころは親のわたしの都合に合わせて遊びに行くために、よく学校を休ませたものだ。

 もっとも、不都合なこともある。母校の同窓会などは、たいてい各地に散らばっている同級生が帰省する盆休みに開催されるので、わたしなんぞ1度も参加したことがない。先日の本欄で紹介した三重県四日市市でのイベントの際に、新聞で知ったからと高校の同級生が何人か会いに来てくれたが、なんと二十数年ぶりの再会だった。

 ともあれ、わざわざ連休を割いてエビとカニの水族館を訪ねてくださるお客さまに、わたしたちは休み返上で水族館を演出し、徹底的に楽しんでもらう喜びを味わっている。わたしの辞書には違う意味で連休という字が加わりそうだ。

 そうそうもう一つ、すさみに移り住んだわたしの辞書からは“ボーナス”という言葉も消えて久しい。

(すさみ町立エビとカニの水族館長)

写真オープン以来、年中無休の町立エビとカニの水族館(すさみ町江住で)

更新)