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(394)和名と差別用語

 「あれっ、これイザリウオじゃないの。カエルアンコウって書いてあるよ」

 最近、あちらこちらの水族館の魚のラベルに変化が起きているのにお気付きだろうか。魚は変わっていないのにこれまでと異なった和名が記されているのだ。

 例えばイザリ(躄)ウオがカエルアンコウ、テナシ(手無し)ゲンゲがヒレナシゲンゲ、オシ(唖)ザメがチヒロザメ、クロメクラ(盲)ウナギがクロヌタウナギ、セムシダルマガレイがオオクチヤリガレイ…といった具合だ。

 これは日本魚類学会が、日本産の魚類の中で、いわゆる差別用語と判断された9つの言葉が含まれる和名を持った魚30種、さらに種より上の属や科に含まれるものも合わせて49種を改称しようと立ち上がったものだ。検討委員会によって新しい名前が提案された。混乱を招かないよう、魚類学会がイニシアチブをとって統一しようというわけだ。

 ところで、日本の生物にはラテン語で表記された世界共通の学名と、日本国内でのみ通用する標準和名がある。ほかにも限られた地域でのみ通用する地方名や、出世魚などに付けられたサイズ別の名前、流通段階で勝手に名付けられた“商品名”を持つものもあるが、実は学名以外の名前にははっきりとした命名の規定はない。

 極端に言えば、名前なんて誰が勝手に付けたって構やしないのだ。ただし、それが世間一般に受け入れられ、かつ通用するようになるかは別問題である。通常は新種や日本初記録種が見つかると、専門家が新しい標準和名を付けて論文に記載し、学会誌などで発表して初めて世に出る。

 いまのところ差別和名の改称は魚類のほかには昆虫だけだが、時代の成り行きとしてすべての動物に対しても同様の措置が取られるに違いない。

 もっとも、わがエビとカニの水族館にはそれに該当するエビやカニはいないので、ラベルを作り直す必要はなさそうだ。

(すさみ町立エビとカニの水族館長)

写真エビとカニの名前に差別用語が含まれず、変更せずに済んだラベル(すさみ町江住で)

更新)