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(480)マンボウ捕獲(前編)

 1月初旬としては珍しく暖かく穏やかな朝。ようやく日が昇り始めた熊野灘に漁師たちの掛け声が響き、大敷き網(大型定置網の一種)の入り口が絞られた。気配を察したカモメたちが集まり始め、水揚げが始まったらおこぼれにあずかろうと、ロープを巻き取りだした網船の周りをかすめ飛ぶ。

 先日、もう30年来の付き合いになる三重県尾鷲市九鬼の定置網の網揚げに行ってきた。今年のゴールデンウイークに岡山で開催する大規模な移動水族館で目玉としてマンボウを展示するので、その捕獲をするためだ。

 やがてきしみながらラインホーラーで巻き取られるロープに代わって、袋網の先端に近い部分が顔を見せた。時折浮上してきたイカが勢い余って水面から跳び上がり、ワラサ(小ぶりのブリ)の群れの黒い影が右往左往しているのが水を透して手に取るように見える。

 「マンボウだ!」「よかった! 手ごろなサイズだな」「20〜30匹はいるぞ!」

 上下に伸びた長いひれをパタリパタリ(と音はしないけど)と左右に動かしてのんびりと泳いでいる白っぽいマンボウの姿にまずは一安心。しかし、網がグングン引き寄せられて魚がこすれ合う前に、無傷でマンボウを引き揚げなければならないからぐずぐずはできない。

 「よし!その手前にいるヤツだ!」

 廃物利用で手作りしたシート製の新兵器?“マンボウすくい”で一気にすくい上げ、横付けしていた運搬船のいけすに移す。皮膚の弱いマンボウを状態良く生かすのは時間との勝負だ。

 「ありがとう。先に戻ります」

 体長70センチほどのマンボウを5匹、無事収容したわたしたちは、まだ水揚げを続けている網船に別れを告げ、一目散に港を目指した。

 (すさみ町立エビとカニの水族館長)

写真【移動水族館の目玉となるマンボウ】

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