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(561)地魚料理

 「普通のお客さんに出す料理じゃなくって、普段あまり食べられない魚の料理がいいな」

 こういうわがままが言える定宿があるっていうのはうれしいものだ。マンボウが好きな私のために黒コショウを利かせたヒャクヒロ(百尋=腸のこと)のバター焼きに始まって、ムツの空揚げ、甘辛く煮付けたカゴカキダイ、アカカマスの塩焼きなど、その日の定置網にかかった魚のオンパレード。極め付きは宿のご主人がいけすから上げてきた大アジをみそと一緒にたたいた「なめろう」で、熱いご飯の上に乗っけて食べるとこたえられない。

 私たちが毎年各地の水族館の依頼を受けて九鬼(三重県尾鷲市)の大敷き網(定置網の一種)へマンボウの捕獲に出向く際、必ず前泊する旅館H。鳥羽水族館に勤務していたころからの付き合いだから、もう30年以上になるが、魚市場の前という好ロケーションもさることながら、食事が絶品で、翌朝の夜明け前の出港が苦にならないのはこのせい?かも。

 水族館にとっては展示用として垂ぜんの的で、食べるなんてとんでもないと思っていた美しいシキシマハナダイやアカイサキが、実はとてもうまい魚であるということを教えてくれたのもこの旅館だし、雑魚だと思っていたウリンボ(イサキの幼魚)を開いて酢締めしたものを甘めの酢飯で握ったイサキのにぎりがとんでもなくおいしいということもここで知った。

 「ごめんね、今日はあまり変わったモノが無くて」

 いえいえ、私たちにとっては十分うまくて珍しい料理ですよ。

 余談ながら、定置網の網船の上で暖を取るために燃やされていたコンロのたき火がおきになるころ、ぶつ切りにしたヒャクヒロをさっとあぶって食べさせてもらったが、ちょっと例えるものがないシコシコした歯応えで、こちらもうまい。

(エビとカニの水族館館長)

写真本当においしかったイサキのにぎり(三重県尾鷲市で)

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