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(725)ツバメの子

 「こいつ、羽を傷めてるんじゃなくて、まだ飛んだことないヒナみたいだ」「困ったなあ、このまま放っておいたらネコかカラスにやられちゃうぞ」「仕方がない、とりあえず水族館へ連れてこよう」

 先日、巣から落ちて道路際で翼を引きずりながらバタついていたツバメのヒナを見つけた。辺りを見回してもそれらしい巣は見つからないから戻してやるわけにもいかず、わが家にあった鳥籠に入れて水族館へ連れてきた。以前にも巣から落ちたツバメを飛べるようになるまで育てたことがあるが、大変なのは餌の確保だ。

 「ミールワームを買いに行ってるヒマはないから、とりあえず蚊を取ろう」

 幸い、水族館の周りには蚊がいっぱいいて、夕方になれば蚊取りをつけないと刺され放題になるくらいだから、あとはどうやってつぶさずに捕らえるかという問題だけだ。

 「このツバメ、えらく人懐っこいですね」

「普通なら籠に手を入れるだけでバタバタ逃げ回るのに」

 残念ながらピンセットでつまんで口元へ持っていった蚊は、いったんはくわえるもののすぐ放してしまい、なかなか食ってくれないが、指を差し出すとナント手乗り文鳥のように乗ってくるではないか。もちろんまだ飛べないのだから逃げようとしないのは当然だが、その態度?はあまりにも落ち着いていて、とても子ツバメとは思えない。

 「バッタでもガでもいいからなんとか餌を食べさせないと死んじゃうぞ」

 つぶらな瞳でこちらを見つめる姿はかわいいの一言に尽きるが、消化管が短く、餌が体内にある時間が短い鳥だけに、途切れることなく餌を食べてくれないと急激に体力が落ちて死んでしまう。2日後、私の危惧は的中し、子ツバメはその短い生涯を閉じてしまった。

 (エビとカニの水族館館長)

写真【力及ばず死なせてしまった子ツバメ(す和歌山県さみ町江住で)】

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