「森サン、コノ料理は何ダト思イマスカ?」「日本で食べる牛すじの煮込みに似てるけど…」「ラクダノ筋デスヨ。美味シイデスカ?」
またまた私の珍食?レパートリーが増えた。自称“C級グルメ”の私は、仕事柄、発展途上国を中心にいろいろな国を訪ねる機会に恵まれてきたが、行く先々で日本人があまり口にしないものを食べるのを至上の楽しみとしている。
幸い食べると唇がかぶれる自然薯(じねんじょ)以外に好き嫌いはないので、オオトカゲやヘビ、コウモリからオーストラリア先住民の好む芋虫の類まで、そのレパートリーは本(拙著「おいしいアジア怪しい食の旅」ワニ文庫)にできるほどになった。
しかし、さすがにラクダを食べる機会には恵まれず、かってアルタイ山脈の麓まで足を延ばした時も、ラクダが普通に家畜として飼われているのは見たが、ごちそうしてやろうとは言ってもらえなかった。
もっとも、ラクダ料理と言っても砂漠で丸ごと1頭丸焼き!にするような野趣にあふれたものではない。なにせ調理するのは高級中国料理店の経験を積んだ料理長。筋の部分をきれいに下ごしらえして同じ大きさに切りそろえ、長時間かけてスープで煮含めたもので、ゼラチンのように軟らかく、しっかりと味付けがされている。
「初めてラクダを食べたけど、おいしいですね」「森サンハ何デモ美味シイト言ッテクレルカラ、招待ノシガイガアルヨ」
今夜のホストは中国一の水族館、北京海洋館の館長で、私とは旧知の間柄。私の中国茶好きと珍食好き?を心得ていてくれて、毎回香りのいいジャスミン茶と珍しい料理で歓待してくれる。下戸の私に気を使ってもらえるのもうれしい。
「2月末ニスサミヘ行クヨ」 よーし、今度はすさみ名物イノブタとけんけんカツオで歓待だ。
(エビとカニの水族館館長)