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(746)スノークラブの脱皮

 「スノークラブが脱皮し始めてますっ!」

 スタッフの知らせにビデオカメラをひっつかんで駆け付けたオーストラリアン・スノークラブの水槽の前。

 全身“真っ白なカニ”がウリのはずが、長年の飼育で甲羅はコケ(珪藻〈けいそう〉)で汚れ、隣にいる茶褐色のオオエンコウガニと大して変わらなくなっていたが、浮き上がり始めた甲羅の下からは今までに見たこともないような純白の新しい甲羅が顔をのぞかせている。

 取りあえず三脚にカメラを据え、録画を始めたが、さてスノークラブのような脚を広げると40センチ以上もある大形のカニが脱皮を終えるには一体何時間かかるのか分からないので、長期戦を覚悟した。

 「タカアシガニは6時間くらいですからねえ」「うまく抜けてくれるといいんだが」

 実はエビとカニの水族館で飼育している生物が死ぬ原因のトップは、脱皮の失敗と脱皮直後の柔らかい体を食われる共食い。特に脱皮に時間がかかると古い殻が抜けきらないうちに新しい殻が固まってしまい、もうこうなったら助けようがない。また、ソフトシェルクラブを食べたことがある方ならお分かりだと思うが、脱皮したばかりの甲羅は頼りないほど柔らかく、とても身を守ることなどできやしない。

 そもそも脱皮とはキチン質が主成分のクチクラからできた硬い外骨格を成長するに連れて脱ぎ捨てることで、内側にできた新しい柔らかな甲羅は石灰質によって硬化する。そのため、大きな個体ほど時間がかかるのは仕方がないが、その所要時間の長短が生死に大きく関わってくるのだ。

 1時間、2時間、3時間…。遅い! 少しずつ白い部分が広がってきているが、時間がかかり過ぎている。結局、深夜まで見守ったが抜けきらず、翌朝、甲羅がほぼ抜けたところで死んだスノークラブを水槽から取り上げることになったのだった。

 (エビとカニの水族館館長)

写真【甲羅がほぼ抜けたオーストラリアン・スノークラブ(和歌山県すさみ町江住で)】

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