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運航1年4500人超が乗船 熊野川川舟下り

 熊野川で昨年9月25日に始まった川舟下り事業が1年を迎えた。乗船客数は4549人。目標の5000人には達しなかったが、語り部の解説とともに自然や名所旧跡を楽しむ約1時間半の船旅は、団体、個人を問わず多くの観光客から好評を得た。世界遺産に登録された熊野川の景観を生かした観光事業として、軌道に乗りつつあるようだ。


 川舟の出発地にある熊野川川舟センターによると、この8月には1カ月当たりで過去最多の821人が乗船した。乗船客は年配の夫妻や若者のカップルなどの個人客がほとんどで、熊野三山巡りと絡めたツアーなどに参加した団体客が全体の2割程度を占めた。また、東海、関東方面からの観光客が京阪神方面からを上回っている。

 乗船客からは「いにしえの人の気分にひたれた」「熊野の自然は素晴らしく、語り部や船頭の技術にも感動した」「バスからは見られない風景を見ることができた」などの感想が同センターに寄せられている。

 センターは「エメラルドグリーンの川をゆったりと下って気持ちをリフレッシュし、癒やしの地の熊野を体験してもらえたら」と話している。

名所旧跡が点在

 熊野川は、中流の熊野本宮大社(田辺市本宮町)から河口部にある熊野速玉大社(新宮市)までの約40キロが「川の参詣道」として2004年7月、世界遺産に登録された。

 川舟下りは往時の熊野詣でを再現した体験型観光として、新宮市と県が事業化した。コースは、同市熊野川町田長の道の駅「瀞峡(どろきょう)街道熊野川」から速玉大社横の新宮権現河原までの約16キロ。両岸に山が迫り、途中には「比丘尼(びくに)転び」「昼嶋」「釣鐘(つりがね)石」など、さまざまな伝承が残る巨岩や小島が点在する。

歴史深い「川の古道」

 平安から江戸時代にかけ、熊野三山を訪れた巡礼の多くは田辺から中辺路の山中に入り、本宮大社に参拝した。その後は、川舟で下って速玉大社に赴き、高野坂を越えて熊野那智大社(那智勝浦町)に詣でた。

 早くから「川の古道」に注目し、調査や案内のために20回は熊野川を下ったという新宮市教委学芸員の山本殖生さんは「文化的景観を実感できるルート。伝説に彩られた名所旧跡がたくさんあり、四季折々の楽しみもある。語り部には研修に励んでもらい、乗船客は、語り部を通じて川下りの魅力を知ってほしい」と話している。

アクセス面も改善 

 6月中旬からは、復路に無料送迎バス(定員29人)が配備され、個人で川舟に乗船する観光客の不便さが解消された。それまで、自家用車で川舟センターに来た個人客は、川下りの終点地の権現河原からは路線バスやタクシーで出発地に戻るしかなく、改善を求める声が出ていた。

 運航期間は3月から11月までで、完全予約制。川舟センター所有の川舟は12人乗りが4隻、8人乗りと9人乗りが1隻ずつの計6隻。船頭と語り部が同乗する。午前10時と午後2時半の1日2回出る。乗船料金は1人3900円(小学生は2000円)。


写真【運航開始から1年。各地から乗船客が集まる「熊野川川舟下り」(熊野川で)】

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