和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年12月16日(月)

「陸奥宗光」

 和歌山県が生んだ明治の外相・陸奥宗光を主人公にした葉室麟の小説『暁天の星』(PHP研究所)を読んだ。葉室は1年半前に死去しており、本書は未完の作品だ▼紀州藩重役の家に生まれた宗光は、幕末の討幕運動で坂本竜馬と劇的な出会いをした。竜馬暗殺後は、その志を生かすことを生涯の目標にした。明治新政府に投獄されたこともあったが、後に伊藤博文らに引き立てられ、外相を務めた。最大の功績は、幕末に英米仏などの列強と結んだ不平等条約の改定だった▼あまりに頭が切れたので「カミソリ」の異名があったが、時代を先取りする見識と巧みな外交感覚で見事にこの難事をこなす。社交界の華とうたわれた妻の亮子も夫を助けた。英国との難しい交渉に成功した日、宗光は亮子を抱きしめて「これで晴れてあの世で竜馬さんに会える」と語った言葉に感動する▼一方、竜馬に関しては、かつての職場の同僚が先輩だった司馬遼太郎に、身内に伝わる竜馬の資料を提供し『竜馬がゆく』が世に出るきっかけをつくった。私は土佐を訪ね、この友人の案内で竜馬ゆかりの地を巡ったが、空港名をはじめ、竜馬を賛美する仕掛けが各地にあった▼一方、宗光については私の郷里、白浜町富田の柏木家は宗光と交遊があったし、その縁で宗光が富田坂でイノシシ狩りをしたこともあった。いまは県でも、宗光顕彰計画が進んでいる。機会をみて取り上げたい。(倫)