和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年07月16日(火)

「黒白フィルム復活」

 富士フイルムが昨秋に終了したモノクロフィルムの販売を今秋から再開する。フィルムならではの表現を求める愛好家やプロカメラマンが復活を熱望していたという▼このフィルムには思い出がある。写真を趣味にしていた父の影響で小学5年生からカメラを持ち、自分で現像した。真っ暗な暗室でパトローネ(フィルム容器)を開け、手探りで現像用のタンクに巻き込む。現像液の温度は20度にぴったり合わせ、現像時間は10分きっかり。指定を守らないと現像が不足したり過度になったりする▼プリントの際に濃くしたい部分や薄く仕上げたい部分があれば、引伸機の光を影絵のように手でさえぎって露光量を調節した。そうした経験は新聞記者になってから役立った▼いまは若い記者に暗室や引伸機と言っても通じないし「現像」の定義も変わった。デジタル写真の現像は、カメラの原画データをパソコンのソフトで展開すること。その際に色合いやコントラストの調節はもちろん、部分的に濃くしたり薄くしたりすることも自在だ▼逆にモノクロには、カラー写真にはない階調の美しさや力強さ、表現力がある。だが、デジタルカメラで撮ったカラー写真を黒白に変換してもつまらない写真にしかならない。カラーと黒白では撮影前から対象をとらえる感性が異なるからだ。フィルムとデジタルではシャッターを切るときの緊張感も違う。写真の奥深いところである。(長)