和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年10月07日(月)

虫食い材に〝光〟 個性生かし照明インテリア開発

あかね材で作った照明インテリアを真砂充敏市長(右)に手渡す榎本将明さん(中央)と谷正義さん=和歌山県田辺市の市長室で
あかね材で作った照明インテリアを真砂充敏市長(右)に手渡す榎本将明さん(中央)と谷正義さん=和歌山県田辺市の市長室で
 和歌山県田辺市の事業者らでつくる熊野の山を守るプロジェクト「BokuMoku(ボクモク)」(榎本将明代表)が、虫食い痕が残る「あかね材」を活用した照明インテリアを開発した。販売を通じ、あかね材の普及を図るとともに、売り上げの一部を山に還元して保全、再生を図る。

 あかね材はスギノアカネトラカミキリの幼虫に食害された木材。林業従事者が減少し、伐採や枝打ちなど十分な管理ができていないことで発生するという。強度や耐久性に問題はないが、見た目やイメージの悪さで敬遠され、安価で取引されやすい。そのため放置され、山林荒廃の原因の一つになっている。

 ボクモクは市内の製材所、木工所、家具店、建築士、デザイナー、森林コンサルタントらで構成。虫の食べ痕としてできた穴やシミをあえて隠さず、「個性」としてデザインした製品を開発している。

 新商品「BokuMoku AKARI(アカリ)」は、海南市の竹、木材製品加工の竹千代(谷正義社長)と共同で製作。ヒノキ製で直方体と円柱型の2種類ある。高さはいずれも約30センチ。角材や丸太材の中心部をドリルでくり抜き、表面には虫食いのような穴をデザインした。中にLEDキャンドルを設置すると、温かな光がともる。

 榎本代表と谷社長は2月25日、田辺市長室を訪問し、2種類の商品サンプルを市に寄贈した。真砂充敏市長は「未利用材の活用がビジネスとして成立し、広がればいいと期待している。市長室に飾ってPRしたい」とエールを送った。

 榎本代表は「コロナ禍で厳しい中、温かい光で癒やされてほしい。商品が熊野の森の現状を知るきっかけになればうれしい」と話している。

 価格は1万5千円(税抜き)。家具店「リバラック」(田辺市高雄1丁目)で販売している。1本販売するごとに、ドングリ苗代として500円を育林業「中川」(同市文里2丁目)に寄付する。

■あかね材の活用広がる

 田辺市内では、あかね材の家具が事業所や家庭にじわりと広まっている。市長室やJR紀伊田辺駅前の田辺エンプラスがテーブルを導入したほか、民間事業所やレストランでもテーブルに使用するところが出てきている。

 木の育ってきた環境や歴史を伝える「物語」に企業も注目。市の関係人口づくりに協力する日本最大級の登山・アプリメディアを運営する「YAMAP(ヤマップ)」(福岡市)ではテーブルセット、不動産大手「三菱地所」が白浜町で運営する施設ではアクリルスタンドを購入。他にもベンチやソファなど県内外から注文があるという。

 ラックは市のふるさと納税の返礼品になっており、人気を集めている。