和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年08月18日(日)

認知症と生きる 私たちの見方から変えよう

 認知症の当事者、みなべ町の那須孝二さん(69)に、認知症になってからの暮らしや思いを取材。苦悩や困難の中にあっても、生きがいや目標を持ち、いまを大切に歩んでおられる姿に共感し、3回に分けて記事にした。

 閉じこもりがちな時期もあったが、いまは認知症の相談や交流の場で話を聞いてもらえたことに元気づけられて地域に出る。ボランティアや趣味の野菜作りなども楽しむ。「自分が認知症だと隠す必要はない。できることをやればいい」と言う言葉が心強い。

 認知症高齢者数は、2025年に65歳以上の約5人に1人に達すると見込まれる。認知症は誰にも訪れる可能性のある病気だ。

 そこで国は、15年に「認知症施策推進総合戦略」を策定。認知症を正しく理解し、認知症の人や家族を温かく見守る「認知症サポーター」の養成、認知症の人や家族が地域の人や専門家と情報を共有し、理解し合う「認知症カフェ」を設置、推進するなどの施策を進めてきた。

 政府はさらに「共生」と、認知症になるのを遅らせたり、なっても進行を緩やかにしたりする「予防」を柱にした「認知症施策推進大綱」を決めた。認知症の人や家族の視点を重視し、高齢者が集える「通いの場」の拡充も重要施策の一つにしている。

 県長寿社会課によると3月末現在、県内の認知症サポーターは約7万4300人、認知症カフェが開設されているのは17市町。地域への認知症の理解の広がりはまだまだ途上にある。

 そうした中、御坊市は今年4月に「認知症の人とともに築く総活躍のまち条例」を施行。条例は「認知症の人の声に耳を傾け、ともにより良いまちづくりを目指すこと」を市の責務とし、「認知症とともに生きていくことへの理解を深める」ことを住民の役割、「認知症の人が安心して自らの意思や力に応じて働くことができるよう、特性に応じた配慮を行うよう努める」ことを事業者の役割とうたって、取り組んでいる。

 その原点には、認知症の人が外に出て地域と関わり、活躍できることで生き生きと輝き、地域のつながりも再構築されたという事例があった。市の担当者は「認知症の人も安心して外に出てやりたいことができる環境をつくることで当事者や家族の負担が軽減される。認知症の人が住みやすい社会は、高齢者や地域の人にとっても住みやすいはずだ」と語る。

 県認知症支援協会の林千惠子代表理事は「その人らしく一緒に助け合いながら生きていくことが大切。誰もが自分のできることは自分でしたいと思い、自分で行動したい。私たちが見方を変えなくてはいけない」と強調する。

 認知症の人も家族の人も心苦しさを感じることのないまち、認知症が自然に受け入れられ、誰もが暮らしやすい地域づくり。その根底には、地域の理解が不可欠だ。そこから国の施策も、すべての取り組みも始まる。 (Y)