和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年12月14日(土)

「王・長嶋時代」

 25日は「生酒(なまざけ)の日」だと、日本文化の専門家、本間美加子さんに教えられた。一度も火入れせずに熟成させた日本酒で、1984年に初めて出荷された日にちなんだ▼「キリリと冷やした生酒をクイッとやれば清涼感が駆け抜ける」と本間さんの言う通りで、私も大いに愛好している▼この日はまた、野球ファンには忘れられない日でもある。私はいま、生酒をクイッとやりながら、1959年、昭和天皇と皇后が史上初めてプロ野球を観戦された試合を回顧している。対戦カードは巨人対阪神。東西の人気チームの戦いがこれ以上の見せ場はないという展開になったのだ▼4対4の同点で迎えた9回裏、先頭打者の長嶋茂雄選手がサヨナラ本塁打を放った。日本野球史に残る名場面だから、記憶されている年配者も多かろう▼当時は「王・長嶋時代」と呼ばれるプロ野球の黄金時代。謹厳な王さんと何となくとぼけた味の長嶋さんの名コンビは、その後も余人を持って代えがたい。いまも真面目一方の王さんに比べ、多少体が不自由な長嶋さんは、常に周囲を和ませるオーラを持つ▼私の好きなエピソードを一つ紹介したい。長嶋さんは高校時代、英和辞典を使って苦闘する仲間を見て「へーえ、英語の意味がすぐ分かるそんな便利なものが、この世にあったのか」と心底感心したらしい。それを「実話かも」と思わせる雰囲気が、この人には常にあった。 (倫)