和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年08月25日(日)

「世界遺産の道普請」

 先日の本紙1面は「道普請10年で3万人超」という大きな見出しで、世界遺産・熊野古道の道普請に取り組む県の事業に延べ約3万2千人が参加したと伝えていた▼活動の主力を担ったのは、古道の保全を社会貢献活動と位置付けて参加した企業や団体。遠く県外からの参加者も多い。紀伊民報の社員有志も少数ではあるが、この間、毎年のようにこの活動に参加してきた。僕も2度ばかり参加し、県世界遺産センター職員らの指導で道に張り出した木の根を切ったり、土を盛ったりしたことがある▼世界遺産というブランドを観光資源として活用しようという自治体は多い。一方で、認定を機に数多くの観光バスが詰め掛け、交通渋滞や騒音など新たな問題が生じている事例も少なくない。ブームが一過性に終わっている地域もある▼そうした中で、多くの協力者の保全活動をそのまま観光資源にしようというこの地の試みは大いに注目される▼この道は古来、人や牛馬が往来し、沿道の人々が他郷につながる命の道として、営々と手入れを続けてきた。暮らしとともにあったからこそ、21世紀にまで命脈を保ってきたともいえよう▼その道を生かすため、まずは保全に力を尽くそう。それが社会貢献だと考える人たちが3万人以上も参加した点に大きな意味がある。日本に世界遺産は数多いが、それぞれの地域がこうした考え方で進めば、保全と利用の両立が計れるはずだ。(石)