和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年07月16日(火)

「ペット」

 ペットについては「イヌ派」だった。これまでに紀州犬を含めて大型犬、中型犬を3匹飼ったが、いずれもつらく切ない別れをした。「もう二度とペットは飼うまい」と固く心に決めていたのだが、自身が高齢化する中、最近はその決心も揺らぎ始めた▼多摩川のほとりの自然公園を散策するのが日課だが、この頃出会うのはほとんどかわいい小型犬ばかり。「これなら高齢者でも飼えるかな」などと思い、人さまの愛犬の頭を勝手になでたりする。年齢とともに慈悲心がいや増した最近は、昔の動物愛を取り戻したのだ▼聞けば、ペットを持ち込んだり、あるいはあっせんしてくれる高齢者ホームがあるそうだ。散歩や便の始末もしてくれるらしい。飼い主が先に死んでも、ホームがペットの余生に責任を持ってくれるという▼そういえば昔、砂漠の多い米アリゾナ州のホームで、ラクダと過ごしている高齢者がいた。日本もラクダは無理としても、孤独の身を慰めるペット込みのホームができるのも、高齢者時代の勢いかもしれない▼でもそこで天の声。「そんなホームは当然、入居料はバカ高いぞ。政府が言ったとか取り消したとかいう2千万円の蓄えは、いったいお前さんにあるのかえ」という声が聞こえた▼グッと詰まった。誰にも邪魔されず、余生を一人、ペットと幸せに送るという私のひそかな夢は、蜃気楼(しんきろう)のようにはかなく消えたのだった。(倫)