和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年04月23日(火)

いさり火漁を体験しよう みなべの釣り餌店が企画

夜に電灯をつけてイワシを漁獲する「棒受け網漁」(和歌山県みなべ町沖で)=提供
夜に電灯をつけてイワシを漁獲する「棒受け網漁」(和歌山県みなべ町沖で)=提供
 いさり火による「棒受け網漁」を体験するツアーを和歌山県みなべ町の釣り具釣り餌店が企画している。夜に電灯を照らしてイワシを取る伝統漁法で、ツアーは17日から始める予定。「迫力満点で感動的な体験」とアピールする。


 ツアーを企画しているのは、同町堺の「釣太郎」。湯川由弘社長(56)が5年ほど前、棒受け網漁の漁船に乗せてもらったところ、他の漁では味わったことのない感動を覚えたという。「田舎で暮らし、海によく行っていてもそうだから、都会の人だったらもっと感動するのでは。紀南の魅力をぜひ味わってもらいたい」と思い立って、地元の漁師に協力を求め、今年になって実現にこぎ着けた。

 棒受け網漁はサンマやアジ、サバ、イワシ、シラスなどを取る漁法。海中に網を仕掛け、電灯を照らして誘い込んですくい取る。同町ではイワシ漁が盛んで、春から夏にかけてが漁期。その際、沖合に浮かぶいさり火は幻想的で、夏の風物詩として知られる。

 釣太郎の企画は「漁り火キャッチング&体験ツアー」。堺の漁港を午前1時すぎに出港して、5時ごろに帰港する。1日1組(2~5人)限定。体験料は1人1万円(税込み、保険料含む)で小学生以下は半額。漁獲があれば土産にイワシがもらえる。当日はライフジャケット、かっぱ、長靴、タオル、着替え、クーラーボックスなどを各自持参する。

 湯川社長によると、今季はイワシの回遊が例年より1カ月以上遅れたため、ツアーの開始も計画より遅くなったという。漁は今月末で終わるため、体験希望者は早めの予約が必要。日曜は漁が休みで、その他の日も天候によって中止する場合もある。

 湯川社長は「暗闇の中に浮かぶ船に乗っていると宇宙を漂っているようで、日常では味わえない体験になると思う。それに漁師のかっこいい姿も見てほしい」と力を込める。

 地元の漁師によると、棒受け網漁をする漁船は年々減り、現在では十数隻だという。漁獲量が減るなど漁業を取り巻く環境が厳しくなっているのが要因とされる。湯川社長は「漁業に観光を取り入れることも必要ではないか。漁師が潤うよう紀南の体験として定着できればと思う」と話している。

 ツアー体験は、釣太郎のホームページで紹介しており、申し込みもできる。問い合わせは釣太郎(0739・72・2110)へ。