和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年08月18日(日)

地元の宝さらに磨こう 世界遺産登録15年

 熊野三山と、そこに至る熊野古道が世界遺産に登録されて15年。周辺や沿道の街並み、集落の様子は激変した。

 一番は外国からの来訪者が増えたこと。山間の集落が国際色豊かになっている。登録当初は日本人観光客が多かったが、ここ数年、欧米からの来訪者が急増。熊野本宮大社がある田辺市本宮町では2018年度の宿泊客が2万人を超え、04年度の51倍にもなった。

 受け入れる側も一変した。とりわけ来訪者の多い中辺路では、京阪神からの玄関口である田辺の市街地や途中の中辺路町近露などに宿泊施設や飲食店が増えた。「ゲストハウス」には、空き家や空き店舗を改修して活用する例が多く、寂れる一方だった街や集落が息を吹き返しつつある。

 ゲストハウスは、開業への初期投資が少なく、その分、客にとってはリーズナブル。アットホームな雰囲気も人気だ。荷物を預かって宿泊場所まで届けるサービスをする業者も増えている。

 こうした新たなビジネスに取り組むIターンやUターン者も少なくない。世界遺産への登録によって過疎が進む地域にスポットが当たって観光客や古道を歩く人が増え、そのにぎわいに引き寄せられて新たな人材が地域に根付くという循環だ。

 この循環の中から、古くからこの地に住む住民も郷土の魅力を再発見し、語り部となって来訪者を案内したり、店先に立って自慢の産品をPRしたりしている。退職者が第二の人生の生きがいとして取り組んでいる例も少なくない。

 語り部活動には子どもたちも関わっている。本宮町や中辺路町近露など校区内に熊野古道が通る学校が、ふるさと学習で取り組んでおり、郷土に誇りを持つきっかけになると期待されている。

 世界遺産の登録地は、国内だけでも23カ所。登録後、来訪者数が増えても、ブームが一過性に終わる地域も少なくない。

 その点、熊野古道を歩く人は年々増加している。田辺市で活動する旅行会社の社長は「世界で二つしかない世界遺産の信仰の道であり、それに加えて地域住民が優しく、来訪者がいい思い出をつくれているからだ。欧米とは異なる風景や文化がこの地には色濃く残っているのも魅力」という。

 そんな熊野古道が、次の段階に進む時期に来ている。周辺の景観も含めて保全するという意識をどう定着させるかということだ。

 これまでもボランティアによる道普請など、地域の宝である史跡を守るという意識は高かった。しかし、周辺の文化的景観の保全というところまでは目配りが届いていなかったのが実情ではないか。

 そこをどうするか。この15年、保全活動を続けてきた世界遺産熊野本宮館の辻林浩館長(74)は「次の段階は世界遺産を磨くこと。森や集落を守るだけでなく、再生することも必要」と語る。

 「信仰の道」としての熊野古道を磨こうということだろう。広く共有したい考え方だ。(Y)