和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年08月18日(日)

「程さんの薬膳料理」

 「料理の鉄人」を初めて破った台湾料理の達人、程一彦さんの訃報が届いた。81歳だった▼初めて会ったのは1988年の秋。昭和天皇の病状が進み、世間が重苦しくなっていたころだ。台湾料理が好きだった落語家の露の五郎さんに誘われ、大阪駅近くのビルにある程さんの店「龍潭」を訪れた▼店主夫妻の温かい雰囲気、医食同源を説き、分かりやすい言葉で料理のポイントを説明する語り口。興が乗れば、ピアノの伴奏で得意のジャズナンバーまで披露してくれるサービス精神。同じ大学の出身ということもあってすっかり親しくなった。以後も、当時「あまから手帖」の編集長だった重森守さんらと、ことあるたびにおじゃました▼数年後、僕が夕刊「ヘルシー面」の編集長になったときには、即座に健康料理をテーマにした連載を依頼。医療と食事の源は同じだという考え方から生まれた『家庭でつくる簡単薬膳』という実用的な随筆は、紙面の売り物となった▼この季節になると、その付き合いの中で教えてもらった「ピリ辛キュウリ」を思い出す。それは新鮮なキュウリを長さ約3センチ、幅は1センチ弱の短冊に切って、手早くフライパンで炒める。仕上げにさっとしょうゆを掛け、ラー油を数滴垂らす。ラー油の辛さとしょうゆの香ばしさが食欲をそそり、食事が進む。夏ばてには効果満点だった▼今夜の食事にはこの一品を加え、故人の冥福を祈ることにしよう。(石)