和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年09月19日(木)

「東北の被災地訪問」

 東日本大震災の被災地を巡るクルーズに参加した。仲間としばらく震災孤児の奨学資金を援助する活動をしていたから、念願の機会だった▼終戦直後の昭和南海地震は鮮明に記憶している。大地震の後、大津波が襲い、旧東富田村の高台にあったわが家の下を、家屋や家畜が流されていくのを震えながら眺めた。串本町に壊滅的な被害があり、県内の死者は269人に上った▼青春時代を過ごした神戸も、1995年の阪神大震災で大きな打撃を受けた。友人を訪ね、現地の惨状に息をのんだ。地震、津波、水害などが次々襲う災害列島の過酷な宿命に胸が痛い▼今度の訪問地の一つ、岩手県山田町は住宅の4割が全壊、828人が死亡した。町は中心市街地の整備をやっと終えたが、自慢の海岸美は防潮堤で遮られ、買い手のない住宅地に「売り地」の看板が並ぶ▼不通だった宮古―釜石間の鉄道もやっと開通した。若者は都会志向で、人口は2万人から4分の1も減った。観光用列車で説明役を務めた短大出の若い女性は、月給は安くボーナスもない鉄道会社にあえて就職した▼「家族全員が被災し、地元のお世話になったので」という。過疎に拍車がかかる被災地だけに、みなその心意気に拍手した▼自助は震災地に不可欠だ。その上で国民の支援も必須だ。私たちにできることの少ないのが申し訳ないが「せめて地元の特産品を買おう」と、参加者は財布を緩めた。(倫)