和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年04月25日(木)

60年ぶり旧校歌が復活 白浜第二小、地域住民が譜面起こし

児童たちの前で旧校歌を披露する卒業生。楽譜を作った上西浩子さんがピアノを演奏した(和歌山県白浜町の白浜第二小学校で)
児童たちの前で旧校歌を披露する卒業生。楽譜を作った上西浩子さんがピアノを演奏した(和歌山県白浜町の白浜第二小学校で)
 和歌山県白浜町の白浜第二小学校で約60年前まで使われていた旧校歌が〝復活〟した。歌詞だけがある状態が長く続いていたが、地域住民の協力で譜面ができた。旧校歌を知る卒業生は「きちんとした形で残せるようになり、とてもうれしい」と喜んでいる。


 旧校歌は、いまの校歌が制定された1962年1月まで使われていた。校歌が変わったのは、御幸芝(いまのホテルシーモアの道路向かい)にあった校舎から現在の場所へ新築移転したことに伴ったとみられる。作者は不明で、いつから使われていたのかもはっきりと分からない。御幸芝に校舎ができたのは22年。

 旧校歌を知る卒業生の間では、同窓会や地区の集いで歌われ続けてきた。これまでに楽譜がないことが何度か話題になり、学校や勤務していた教員に尋ねたこともあったが、見つけられなかった。

 今年になって、地域住民らでつくる学校運営協議会で、旧校歌が話題になった。その中で、校区内にある薬局の薬剤師である上西浩子さん(63)がピアノを弾けることが分かり、楽譜作りに協力してもらうことにした。

 上西さんは、卒業生がアカペラで歌う旧校歌の音源を基にして譜面に起こした。「正解がなく、イメージに合うか少し心配だったが、皆が歌いやすいような音を取った」と振り返る。

 制作期間は約1カ月。子どもが元気に歌えるような曲調にし、主旋律に合う伴奏も付けた。今夏に複数の卒業生に聞いてもらい「これでOK」との返事をもらった。上西さんは「携わることができて光栄」と話す。

 卒業生の有志は27日、学校の催し「わくわく体験博」で、いまの児童の前で旧校歌を披露した。70~80代の男女13人が集まり、上西さんのピアノの演奏に声を合わせた。

 卒業生で、校歌復活に向けて中心的に動いてきた国本徹さん(74)は「ずっと何とかしたいと思っていた。これで学校の歴史の一ページに残ると思うと、すごくうれしい」と笑顔を浮かべていた。

 旧校歌の披露後、学校運営協議会などは、旧校歌の復活に尽力したとして、上西さんと小川裕史校長(59)に感謝状を贈った。「言い尽くせない『ありがとう』の気持ちを込めて」という感謝状の文言が読み上げられると、児童や保護者らから拍手が起きた。

■旧校歌の歌詞(1、2番)

 真紅(しんく)の夕陽(せきよう) 海原そめて

 木の間(このま)がくれに 往(ゆ)く船みえて

 時は色こき御幸(みゆき)の芝に

 そびゆる我等が 学びや見よや


 太平洋の海原とおく

 かもめの翼 きらめく夕べ

 老松(ろうしょう)のかげ いらかは高く

 かがやく我等が 学びや仰げ

 (実際は4番まである)