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2024年04月26日(金)

伊能忠敬が関係か 和歌山県・周参見湾の古地図見つかる

すさみ町立歴史民俗資料館で見つかった周参見湾の古地図(和歌山県すさみ町周参見で)
すさみ町立歴史民俗資料館で見つかった周参見湾の古地図(和歌山県すさみ町周参見で)
 江戸後期の文化年間(1804~18)に行われた海浜調査のものとみられる、和歌山県すさみ町の周参見湾を表した古地図が、町立歴史民俗資料館(すさみ町周参見)で見つかった。表題に「周参見浦湊(みなと)」とあり、現在は海水浴場や堤防などが築かれて面影はないが、中央には町のシンボル稲積島が描かれている。伊能忠敬(1745~1818)が関わった可能性もあり、地史研究家らは注目している。


 資料館を管理している町文化財審議会委員長の小倉重起さん(85)が昨秋、館内の史料を整理していた際に古めかしい封筒を見つけた。中に古地図と手紙が入っていた。

 古地図は横54センチ、縦40センチで、貼り合わせた紙に墨で書かれている。稲積島には鳥居が赤く描かれており、その沖には釣り人に人気の鰹(かつお)島もある。地名では、現在も使われている「平松」や「ヲドマリ(小泊)」の文字が見られ、詳しく記されている。

 一方、陸上は簡略だが3本の川がある。太間川と周参見川、それに周参見小学校付近にあった代官所に続く川が描かれている。

 寄贈したのは三重県尾鷲市の市史編さん室長を務めた伊藤良さん(故人)。同封の手紙には「当市旧家の文書整理中 貴町の古図が出て参りましたので 御参考になればと思い お贈りいたしました 年代は書してありませんが 文化五年ごろの海浜調査のころのものではないかと…」と記されている。

 町教育委員会宛てとなっているが、当時を知る職員はおらず、送られてきた年代は分からない。郵便番号が5桁だったため、1968(昭和43)~98(平成10)年の間に届いたと考えられている。

 紀南の地図に詳しい元高校教諭の桑原康宏さん(77)=田辺市中万呂=は「地図の状態から江戸時代のものだろう。文化財としても価値が高い」と話している。

 1805(文化2)年に伊能が紀州を測量した際、測量の能率を上げるため、測量予定地の絵図を伊能が要求したという記録が各地に残っており、あらかじめ提出された下絵である可能性があるという。

 小倉さんは「古地図の時代は推測でしかないが、すさみ町の歴史を知る上で貴重な史料。今後、詳しく調べて何らかの形で町民に見てもらいたい」と話している。