和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年10月19日(土)

緊張による運動パフォーマンス低下を防ぐことに成功! ~緊張を抑えるための訓練法としての応用に期待~

2019年9月19日

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)

緊張による運動パフォーマンス低下を防ぐことに成功!
~運動や音楽演奏をする際の緊張を抑えるための訓練法としての応用に期待~

【ポイント】
■ 緊張による運動パフォーマンス低下と背側帯状回皮質の活動の相関関係を発見
■ 背側帯状回皮質への経頭蓋磁気刺激(TMS)によって運動パフォーマンス低下の抑制に成功
■ 運動や音楽演奏をする際の緊張を抑えるための訓練法としての応用に期待

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)脳情報通信融合研究センター(CiNet)の春野雅彦研究マネージャー、源健宏協力研究員、フランス国立科学研究センター(CNRS)のガネッシュ・ゴウリシャンカーシニア研究員の研究グループは、緊張による運動パフォーマンスの低下のメカニズムを調べるための課題を考案し、fMRI実験によって被験者の運動パフォーマンス低下と背側帯状回皮質の活動が相関することを発見しました。さらに、背側帯状回皮質に対する経頭蓋磁気刺激法(TMS)で脳活動を抑えることにより、この運動パフォーマンス低下を防ぐことに成功しました。今回の結果は、緊張による運動パフォーマンス低下と背側帯状回皮質の脳活動の間の因果関係を初めて証明するものです。今後は、運動や音楽演奏の際の緊張を抑えるための訓練法としての応用も期待されます。本成果は、2019年9月19日(木)18時(日本時間)に、英国科学雑誌「Nature Communications」にオンライン掲載されます。

【背景】
 スポーツや楽器演奏など高速で複雑な運動(系列運動)のパフォーマンスが緊張で低下することは、一般人とトッププロの区別なく、誰もが経験します。スポーツ科学の分野では、学習で一度は自動化(無意識化)された各運動間の流れ(運動要素)に対する注意が緊張によって増加し、その運動要素が再び意識されて干渉が生じることで、運動パフォーマンスが低下するとされます(自己焦点付けモデル)。しかし、このモデルを証明する行動や脳のデータは存在せず、そのため、緊張による運動パフォーマンス低下を防ぐ方法も知られていませんでした。

【今回の成果】
 今回、研究グループは、緊張による系列運動のパフォーマンス低下を定量的に調べる課題を新たに考案し、fMRIとTMSを用いることで、緊張による系列運動のパフォーマンス低下と背側帯状回皮質の脳活動の間の因果関係を初めて証明し、さらに、緊張による運動パフォーマンス低下を抑制することに成功しました。
 一般的に、テニスやピアノ演奏など運動を覚える際には、まずパーツを練習し、後で繋ぎ合わせます。今回、NICTは、この過程をモデル化し、長さ10のボタン押しを高速で行う際に、長さ6と4の2つの部分系列に分けて覚える人(part-learners)と長さ10の全体を一度に覚える人(single-learners)に分け、さらに、覚えた後に失敗すると電気刺激が与えられるテストセッションを課すという課題を考案しました。まず、この課題を行動実験として実施し、次に、fMRIの中で、同じようなテストセッションのある課題を実施しました(図1A参照)。

【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201909191050-O1-6y70eQCm
図1 緊張による運動パフォーマンスの低下と背側帯状回皮質の活動

 その結果、両方の実験で、全く同様に、part-learnersは学習が進むと部分系列の繋ぎ目でのボタン押し間隔時間のばらつきが減り、single-learnersよりもボタン押しが速く正確になりました。しかし、緊張を伴うテストセッションが始まると、図1Bに示すように、part-learnersによる部分系列の繋ぎ目(図1B中のJ参照)でのボタン押し間隔時間のばらつきは再び増加しました。つまり、自己焦点付けモデルで言われるとおり、緊張のあるテストセッションではpart-learnersの運動パフォーマンスは再び低下しました。
 次に、fMRIでpart-learnersのテストセッションでの繋ぎ目におけるボタン押し時間の遅れと相関する活動を示す脳部位を探したところ、背側帯状回皮質が同定されました(図1C参照)。
 最後に、テストセッションの直前に背側帯状回皮質に対しTMS(1Hz 図1D参照)を5分間繰り返し行って脳の活動を抑制したTMS part-learnersと、実際には刺激を与えないSham part-learnersを比較する実験を行いました。その結果、TMS part-learnersでは、緊張によるパフォーマンス低下が見られなくなりました(図1E参照)。

 今回の実験結果は、従来メカニズムが不明であった緊張による運動パフォーマンス低下の原因が、背側帯状回皮質にあることを初めて証明したものであり、さらに、TMSによって運動パフォーマンスの低下を防げることを示しています。

【今後の展望】
 今回新たに発見した緊張による運動パフォーマンス低下と背側帯状回皮質の関係を更に深く理解するとともに、TMSによって実際のスポーツ選手や音楽演奏家の運動パフォーマンス低下を低減できるかを検証します。



プレスリリース詳細へ https://kyodonewsprwire.jp/release/201909191050
提供: