和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2020年07月12日(日)

基礎研究の小径から 和歌山高専総合教育科/87/知的財産と市民生活/経済法後藤多栄子/(2)

 特許とは何かという問いかけで知的財産のお話を始めました。特許法という法律によって、特許権という権利が守られています。特許になる前の形は「発明」というアイデアであり、このアイデアが具現化したもの、権利化したものが「特許」であるとお話をしました。

 「発明」は特許の種子のようなもので、実をつけるため、花を咲かせるためには、大事に育てる必要があります。この発明の定義(特許法2条)は、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」であると記憶されていますか。大事なポイントは「自然法則の利用」「技術」「創作」、そして「高度」です。

 「高度」と言われると、何か画期的なこれまでの常識を覆すようなものでないといけない、ロケット開発やLED発明などのイメージがありますが、実際は、それほどハードルは高くないのです。会社で技術開発部門や製品開発部、法務部などにお勤めの方はもうお気づきかと思います。「創作」であるために新規である必要はありますが、会社などがすでに獲得している特許権を調べてみると、もっとこういうふうに改良すればよいのに、ユーザーのニーズに合わせるにはどういった改善を行えばよいか、などの課題があがってきます。そして、所有している特許権に基づいて改良することで、新たな特許権を獲得することができるのです。実際、大半の特許は改良特許なのです。

 では、次に自分の発明で特許権を獲得したい場合はどうすればよいかについてお話しします。一つ目の要件が「発明」であることは言うまでもありませんね。

 二つ目の要件は産業として実施できることです。特許法の目的(1条)は「発明の保護、利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与すること」であります。産業の発達に寄与することが、特許法の究極目的であるので、産業としての実施が不可欠なわけです。産業の範囲は、工業・農業・林業・鉱業・運輸業・保険業・飲食業・金融業なども含むほぼすべての産業分野が該当しています。ただ、「産業として実施」に該当しない例外があります。なんだと思いますか。ヒントは医療分野です。例外に外科手術方法、治療方法、診断方法があります。医療は大きな産業分野であることは明白ですが、上記方法特許が認められると、特許権を持っている医師の病院でしかその医療行為ができない。その医療行為を他の病院で実施するのに実施料金がかかるとしたら、難病や高度医療が必要な人たちにとって高額な医療費を払うことができない場合が生じ、人道上不適切であると判断されて、特許化できない例外となっています。もちろん医薬品は特許になります。

 これで一つ目、そして二つ目の要件がクリアされました。次は「新規性」です。