和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年08月25日(日)

森林環境譲与税 林業活性化の好機に

 国は新年度から新たな森林管理システムを導入し、市町村と都道府県に森林環境譲与税を配分する。県の試算では田辺市への配分は2021年度までの3年間、各年1億421万円。将来は3倍以上に増える見通しという。これを林業再生の好機としたい。


 日本の森林はいま、戦後の高度経済成長期に植えたスギやヒノキの人工林が育ち、木材として利用可能な時期を迎えている。


 ところが「切って、使って、植える」の循環がうまく進んでいない。林野庁の調査では、83%の市町村が民有林の手入れは不足していると考えている。このままでは災害防止や地球温暖化防止など公益的な機能も維持できない。


 そこで、市町村が仲介役になって人工林の管理を意欲のある林業経営者に集約し、適切な森林管理をしようというのがこのシステムだ。作業道がないような条件が悪い森林は市町村自身が管理し、所用者が不明で放置されているような森林も、一定の手続きを経たうえで伐採できるようにする。


 財源となるのは、新たに設ける「森林環境税」だ。24年度から約6千万人が納める個人住民税に1人当たり年間千円を上乗せして国が徴収、その税を譲与税として市町村などに配分する。徴収前の19〜23年度は借入金を充てる。


 全国約1700市町村への譲与税配分額は、19〜21年度は年間160億円。33年度以降は540億円と3・3倍に増える。


 その配分額は、民有人工林の面積や林業就業者、人口などの指標で算出する。田辺市の森林面積は約9万800ヘクタール、うち民有人工林が5万6500ヘクタール。このように広大な山林を抱える自治体にとっては待望の制度である。


 しかし、課題も多い。林業経営に適さない森林を市町村が管理するにしても、専門的な人材が乏しい。管理を委託するにしても、林業界全体が担い手不足の中、対応できる林業会社や経営者がいるかどうかも不透明だ。


 一方で、この財源は林業・木材産業の振興にも活用でき、公共施設の木質化などへの活用が想定されている。ここに地元材を供給できれば、林業の活性化につながるが、現状では安定供給が難しく、森林管理と並行して取り組む必要がある。


 譲与税が自治体に配られても、その分、本来の森林整備予算が削られたのでは元も子もない。双方を合算して整備費が全体として増えているかどうかの点検も忘れてはならない。市町村には、財源の活用方法やその成果を公表する仕組みも求められる。


 新税制は関係者の間で「田辺市発祥」とも言われている。1991年に当時の本宮町長、中山喜弘氏が環境保全を目的にした森林交付税を提唱し、全国の自治体に賛同が広まった背景があるからだ。


 その趣旨を生かし、環境教育やバイオマスの活用などにも視野を広げて森林資源を活用したい。その処方箋を書くのは「発祥の地」の義務でもある。 (K)