和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2021年06月17日(木)

松本さんに田辺市文化賞 和歌山県名匠のおけ職人

 和歌山県田辺市は1日、同市中辺路町野中のおけ職人、松本濱次さん(85)に市文化賞を贈ると発表した。熊野地方で切り出された香り高い杉材を使い、伝統の技法を守りながら木の文化、和の文化を伝え続けてきたことを評価した。

 松本さんは西牟婁郡近野村(現田辺市中辺路町)出身。18歳の頃、田辺市街地のおけ職人に弟子入りし、修業を積んだ。当時、市街地には十数軒のおけ屋があったが、高度経済成長期に入ると安価なプラスチック製品が市場に出回り、仕事が減少。1965年からは市内の製材会社に勤務し、いったんおけ作りから離れた。

 定年退職後は故郷に戻り、近所の人から古いおけの修理を頼まれたことをきっかけに製作を再開。以来、20年以上にわたって日々、おけ作りに励んでいる。

 現在はおけ作りを学ぼうとする人や遠方から持ち込まれたおけの修理も気安く引き受けるなど、80歳を超えてもなお精進を続けている。18年には県名匠に選ばれた。

 おけ作りには、「くれ」と呼ばれる板を一枚一枚組み合わせる「正直」という工程があるが、独特のかんなを使い、ミリ単位で木を削る作業は精緻で、根気のいる作業。松本さんは「『正直』を怠ると、完成した後に水が漏れてしまう。この受賞を励みに、これからもこの『正直』を繰り返し、繰り返し、体の続く限りおけを製作していきたい」とコメントした。

 文化賞は、市の文化発展に貢献した個人を対象に毎年贈っている。旧田辺市で1970年に創設した制度を継承した。今回で50回目。受賞は松本さんで74人目。

 贈呈式は22日に市役所である。