和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2020年07月11日(土)

熊野15一絵(8)田辺市上野/妖しき天空の巨木

日没後に赤く染まった西の空とシルエットが浮かび上がった捻木ノ杉(10月30日午後5時39分、田辺市上野で)
日没後に赤く染まった西の空とシルエットが浮かび上がった捻木ノ杉(10月30日午後5時39分、田辺市上野で)
捻木ノ杉地図
捻木ノ杉地図
 西の空が赤く染まったたそがれ時。安珍・清姫伝説にゆかりを持つ巨木のシルエットが、妖しげに浮かび上がった。

 枝がねじれた姿が印象的な捻木ノ杉である。熊野古道・潮見峠越沿いにあり、高さは約20メートル、周囲約6メートル。田辺市の天然記念物に指定されており、旧市内で最も高い槇山(標高796メートル)の中腹に、市街地や田辺湾を見下ろすようにそびえ立っている。

 安珍・清姫伝説は、慕っていた僧、安珍に裏切られた少女、清姫が大蛇と化し、日高川の下流にある道成寺で安珍が隠れた鐘ごと焼き殺したという物語である。

 熊野詣での帰りに迎えに来るという約束を破って逃げた安珍を追い掛けた清姫は、この木がある場所から田辺の会津橋を渡る安珍を見つけた。その時、悔しさのあまり杉の木をねじり、木はゆがんだまま成長したと伝わっている。

 怒り狂った清姫は、ここから遠く安珍をにらみつけていたのだろうか。その姿を想像すると寒気がし、そそくさと家路に就いた。(牧康宏)