和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年08月18日(日)

迫る貿易自由化 技術と連携で立ち向かおう

 貿易の自由化が進んでいる。昨年12月末には、日本や豪州など11カ国による環太平洋連携協定(TPP)が発効。2月1日には欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)も発効する見通し。TPPとは別に、日本と米国との2国間交渉も視野に入っている。


 自由貿易は「世界に繁栄をもたらす」といわれる。それぞれの国が得意な産業を伸ばし、無関税で輸出したり、輸入したりするのは世界的にみれば健全だといえる。しかし、どこの国にも競争力の高い産業と低い産業がある。競争力の低い産業にとっては、自由貿易はときに死活問題となる。


 とりわけ小規模経営が中心の農業は、大きなダメージを受ける。同じ生産物であれば、生産コスト面で米国や豪州などの大規模な農業にはかなわないからである。


 今は国際的な分業の時代だといわれ、農業も分野を絞って力を注ぎ、競争力を高めるという考え方はある。しかし、それでは生産量が多かった農産物でも衰退し、大産地であっても崩壊しかねない。小さければなおさらだ。


 和歌山県などでは第1次産業は大きな役割を果たしている。とりわけ農業の比重は高い。世界をみても、アメリカなどの大国はもちろん、ヨーロッパの国々も農業は特色と伝統があり、今でも地方の経済を支えている。


 県内では果樹栽培が盛んでミカンや梅は、日本一の生産高を誇っている。野菜や花の評価も高い。しかし、ほとんどは家族経営で海外と比べれば規模ははるかに小さい。それでも加工業や小売り、運送など関係する業種は多く、地方ではなくてはならない産業だ。


 ところが近年、農家戸数は減少し、高齢化が進んでいる。農林業センサスによると、2015年の県内の農家は2万9713戸。20年前より3割ほど減った。逆に60歳以上の占める割合は、20年前より18ポイント高まり7割を超えている。


 貿易の自由化はそれに追い打ちをかける。競争の激化は避けられないからだ。


 最も影響が心配されるのは牛肉。紀南地方では、温州ミカンや晩柑への影響も心配される。JA紀南の本田勉組合長は「牛肉もミカンも海外産とは差別化が図られているので、影響は限定的かもしれない。しかし、競争で全体的に価格は下がるだろう。日本の農業は中小がほとんどだから影響は大きい」と危機感を高める。


 こうした事態に対処するには、規模の拡大ではなく、日本人が得意とする品種の開発や栽培技術の向上だろう。これを推し進め、新規就農者の育成、加工や流通・販売も進めたい。そのためには、いま以上に行政や農協、民間企業の連携、協力が求められる。


 幸い、紀南地域には篤農家と呼ばれる熱心な農業経営者が少なくない。土に生き、ミカンや梅とともに生きてきたその人たちの経験を広く共有して、自由化に立ち向かいたい。その人たちをつなぎ、知見を次代に引き継ぐのが農協や行政の役割となる。(Y)