地域と音楽フェスの相乗効果 神戸市ふるさと納税返礼品「MEGA VEGAS」チケットの訴求力
個人が好きな自治体を選んで寄付できる、ふるさと納税。総務省の指定を受けた自治体に寄付をすると、税制優遇が受けられる制度だ。その際に自治体から送られてくる「返礼品」人気もあり、利用者が年々増えている。人気なのは食材・食品だが、工芸品、温泉や食事の利用券、体験ツアーなどバリエーションが広がっており、近年では音楽イベントのチケットも登場している。このほど、兵庫県神戸市出身のバンド・Fear,and Loathing in Las Vegas(フィアアンドロージングインラスベガス)が主催する音楽フェス『MEGA VEGAS 2024』では、イベントのチケットと神戸市内飲食店の食事券がセットになった返礼品(数量限定)が注目を集めた。
【写真】神戸市在住のバンドFear, and Loathing in Las Vegas
■音楽フェス『MEGA VEGAS 2024』と神戸飲食店がコラボしたスペシャルパッケージチケット
音楽イベントと開催地の飲食店の食事券がセットになった、ふるさと納税の返礼品。このありそうでなかった組み合わせが生まれた背景には、音楽を通じて神戸の人や街の活性化を目指す、ワーナーミュージック・ジャパン(以下、WMJ)と神戸市の強い想いがある。
2011年をピークに減少傾向が続く神戸市の推計人口は、この10月に節目となる150万人を割った。人口減少に歯止めがかからない神戸市は、「人口減少社会に対応した持続可能な街づくり」を目指して、様々な取り組みを行っている。一方、WMJ所属のFear,and Loathing in Las Vegasは、バンドのメンバーが今も神戸市在住で、神戸を拠点に活動しており、16年からは、地元で音楽フェス『MEGA VEGAS』を不定期で開催していた。両者の出会いがきっかけとなり、今年5月、WMJと神戸市は、長期にわたる事業連携協定を締結した。テーマは、音楽を通じて神戸の魅力を外部に発信し、地域や地域の人々と多様に関わる「関係人口」創出・拡大の強化を図ること。そのキックオフイベントとして、3月に『MEGA VEGAS 2023』が初の2DAYSで行われ、以降、神戸市で定期開催することが決まった。
今回、返礼品となったのは、来年3月9日(土)・10日(日)に開催される『MEGA VEGAS 2024』(神戸ワールド記念ホール)のスペシャルパッケージチケット。協定締結から半年足らずで実現したスピード感に、双方の本気度が伝わってくる。音楽フェスを主催するFear, and Loathing in Las Vegasに長年携わり、本プロジェクトのWMJ側の主担当を務める葛山かい氏(KUZUYAMA ROOM ゼネラルマネージャー)はその経緯を次のように語る。
「音楽フェスのチケットをふるさと納税の返礼品に、という案はプロジェクトスタート時から神戸市さんとの間で出ていて、粛々と進めていました。返礼品として登録されるかどうか、その可否は総務省が判断しますが、神戸に縁があることが重要です。その点、『MEGA VEGAS』は神戸市在住のアーティストが主催の音楽フェスであり、これまでも地元の街おこしを兼ねて実施してきた実績もあり、問題なく承認されました。フェスのチケットと食事券をセットにするというのは神戸市さんのアイデアです」(葛山氏/以下同)
1DAYフェスチケットと神戸市内飲食店の食事券がセットとなった返礼品は、寄付金額(5万5000円から13万円)に応じた券種および飲食店舗の組み合わせによる12種類。イベントチケットは当日のみ有効だが、食事券は公募から約半年間利用できるように設定された。音楽フェス当日だけではなく、その他の時期にも観光で神戸を訪れてもらい、その際に利用してほしいという考えからだ。
■想定していた以上の反響 若年層でも気軽に寄付できる導線作りを
さて、返礼品の反響はいかばかりだったのか。そう尋ねると、「想定していた以上に好評だった」と葛山氏は驚きを隠せない。返礼品として関心を持ってもらえるのかどうか、半信半疑であったそうだが、9月23日より申込の受付を開始したところ、相当数の申し込みがあった。SNSでは「税制優遇があってチケットも手に入るのは嬉しい」と歓迎する声が多数挙がっており、今後も継続できると自信を深めたという。
「今回の反応を見て自信を得たのと同時に、もっと気軽に寄付して音楽フェスを楽しんでもらえる、身近に感じてもらえるような寄付額の設定を行う必要があると思いました。ふるさと納税は、年収によって寄付できる金額(控除上限額)に制限があります。13万円の寄付に数十件の応募があったことを「良かった」と捉える一方で、この額を寄付できる層は限られているわけです。そもそも若い人はふるさと納税の仕組みを知らなかったり、関心がなかったり、もっと言えば金銭的な余裕もないでしょう。そう考えると、もっと手に届く返礼品のバリエーションが必要だと思うんです」
アーティストが行う音楽フェスに、ふるさと納税を利用することで、「地域活性化を促進する」という本来の目的、そして仕組みが幅広く伝わる。そして、若年層でも気軽に寄付できるような導線を作っていければ、地方活性の近道になると葛山氏は考えている。それもあり、『MEGA VEGAS 2024』では今後、寄付額を抑えた返礼品を検討している。
「今回のふるさと納税の募集は3つのサイトで展開しました。取り組みを継続するうえでも、告知は重要ですね。ゆくゆくは、毎年募集を楽しみにしてもらえるよう、1つひとつの施策を確実に積み重ねてイベントを活性化していきたいと思っています」
行政と連携して地域に経済効果をもたらしている関西の音楽フェスと言えば、『京都大作戦』(10-FEET主催/京都市)や『イナズマロックフェス』(西川貴教主催/草津市)等が成功事例として挙げられる。『MEGA VEGAS』をハブにして、今後どんなコンテンツが発信されていくのか。すでに進行中の案件も複数あるというだけに、次なる展開を楽しみに待ちたい。
文・葛城博子
音楽の力で持続可能な街づくり 神戸市とワーナーミュージック・ジャパン地域活性でコラボ
エンタメ施設が集積する世界有数のハーバーへ 音楽で街づくりを推進する横浜みなとみらい
カルチャー目線で次世代に継承 ポニーキャニオン異業種連携で地域活性化事業に臨む訳
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【写真】神戸市在住のバンドFear, and Loathing in Las Vegas
■音楽フェス『MEGA VEGAS 2024』と神戸飲食店がコラボしたスペシャルパッケージチケット
音楽イベントと開催地の飲食店の食事券がセットになった、ふるさと納税の返礼品。このありそうでなかった組み合わせが生まれた背景には、音楽を通じて神戸の人や街の活性化を目指す、ワーナーミュージック・ジャパン(以下、WMJ)と神戸市の強い想いがある。
2011年をピークに減少傾向が続く神戸市の推計人口は、この10月に節目となる150万人を割った。人口減少に歯止めがかからない神戸市は、「人口減少社会に対応した持続可能な街づくり」を目指して、様々な取り組みを行っている。一方、WMJ所属のFear,and Loathing in Las Vegasは、バンドのメンバーが今も神戸市在住で、神戸を拠点に活動しており、16年からは、地元で音楽フェス『MEGA VEGAS』を不定期で開催していた。両者の出会いがきっかけとなり、今年5月、WMJと神戸市は、長期にわたる事業連携協定を締結した。テーマは、音楽を通じて神戸の魅力を外部に発信し、地域や地域の人々と多様に関わる「関係人口」創出・拡大の強化を図ること。そのキックオフイベントとして、3月に『MEGA VEGAS 2023』が初の2DAYSで行われ、以降、神戸市で定期開催することが決まった。
今回、返礼品となったのは、来年3月9日(土)・10日(日)に開催される『MEGA VEGAS 2024』(神戸ワールド記念ホール)のスペシャルパッケージチケット。協定締結から半年足らずで実現したスピード感に、双方の本気度が伝わってくる。音楽フェスを主催するFear, and Loathing in Las Vegasに長年携わり、本プロジェクトのWMJ側の主担当を務める葛山かい氏(KUZUYAMA ROOM ゼネラルマネージャー)はその経緯を次のように語る。
「音楽フェスのチケットをふるさと納税の返礼品に、という案はプロジェクトスタート時から神戸市さんとの間で出ていて、粛々と進めていました。返礼品として登録されるかどうか、その可否は総務省が判断しますが、神戸に縁があることが重要です。その点、『MEGA VEGAS』は神戸市在住のアーティストが主催の音楽フェスであり、これまでも地元の街おこしを兼ねて実施してきた実績もあり、問題なく承認されました。フェスのチケットと食事券をセットにするというのは神戸市さんのアイデアです」(葛山氏/以下同)
1DAYフェスチケットと神戸市内飲食店の食事券がセットとなった返礼品は、寄付金額(5万5000円から13万円)に応じた券種および飲食店舗の組み合わせによる12種類。イベントチケットは当日のみ有効だが、食事券は公募から約半年間利用できるように設定された。音楽フェス当日だけではなく、その他の時期にも観光で神戸を訪れてもらい、その際に利用してほしいという考えからだ。
■想定していた以上の反響 若年層でも気軽に寄付できる導線作りを
さて、返礼品の反響はいかばかりだったのか。そう尋ねると、「想定していた以上に好評だった」と葛山氏は驚きを隠せない。返礼品として関心を持ってもらえるのかどうか、半信半疑であったそうだが、9月23日より申込の受付を開始したところ、相当数の申し込みがあった。SNSでは「税制優遇があってチケットも手に入るのは嬉しい」と歓迎する声が多数挙がっており、今後も継続できると自信を深めたという。
「今回の反応を見て自信を得たのと同時に、もっと気軽に寄付して音楽フェスを楽しんでもらえる、身近に感じてもらえるような寄付額の設定を行う必要があると思いました。ふるさと納税は、年収によって寄付できる金額(控除上限額)に制限があります。13万円の寄付に数十件の応募があったことを「良かった」と捉える一方で、この額を寄付できる層は限られているわけです。そもそも若い人はふるさと納税の仕組みを知らなかったり、関心がなかったり、もっと言えば金銭的な余裕もないでしょう。そう考えると、もっと手に届く返礼品のバリエーションが必要だと思うんです」
アーティストが行う音楽フェスに、ふるさと納税を利用することで、「地域活性化を促進する」という本来の目的、そして仕組みが幅広く伝わる。そして、若年層でも気軽に寄付できるような導線を作っていければ、地方活性の近道になると葛山氏は考えている。それもあり、『MEGA VEGAS 2024』では今後、寄付額を抑えた返礼品を検討している。
「今回のふるさと納税の募集は3つのサイトで展開しました。取り組みを継続するうえでも、告知は重要ですね。ゆくゆくは、毎年募集を楽しみにしてもらえるよう、1つひとつの施策を確実に積み重ねてイベントを活性化していきたいと思っています」
行政と連携して地域に経済効果をもたらしている関西の音楽フェスと言えば、『京都大作戦』(10-FEET主催/京都市)や『イナズマロックフェス』(西川貴教主催/草津市)等が成功事例として挙げられる。『MEGA VEGAS』をハブにして、今後どんなコンテンツが発信されていくのか。すでに進行中の案件も複数あるというだけに、次なる展開を楽しみに待ちたい。
文・葛城博子
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