和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年10月20日(日)

漁協の補助金不正 「悪しき慣例」は正そう

 和歌山南漁協(本所・田辺市)が白浜町や田辺市から補助金などを不正に受給していた問題が発覚して約10カ月。この間、漁協の第三者委員会は両市町それぞれの問題について意見書をまとめ、白浜町は調査結果を明らかにした。田辺市はいまも調査を続けている。


 浮かび上がるのは、漁協側と行政がなれ合い、それが不正のゆりかごになっていたという点だ。


 漁協側は正確な申請をせず、市や町は、漁協側から出される書類や作業を十分にチェックしないまま前例を踏襲していた。


 ことは公金の支出の在り方の問題であり、公金は住民が納めた税金だ。まずは双方とも厳しく自らの対応を反省してもらいたい。


 白浜町で問題になったのは、漁業振興助成金と水産増殖事業費補助金。町は2006〜17年度で計1億1720万円を交付していたが、漁協の日置、白浜両支所は、虚偽の申請で実際よりも多く受給していた部分があった。


 第三者委は「申請と異なる受給は計約2720万円」とする意見書をまとめているが、町が調べて「不正」と判断したのは570万円。二つの金額に大きな差があるのは、漁協側が正しく申請していれば問題なかった分を、町が「不正」には算入しなかったからだ。特に漁業振興助成金については、その用途に制約がないことを理由に虚偽申請分も含め、すべてを「交付可能額」だったとした。


 この判断について、町は漁協が虚偽の申請をする動機や必要性がない点を挙げ「正しい指導ができていなかった」などと説明した。


 井澗誠町長も「重く受け止めている」などと述べ、自分たちに非があったことを認めた。しかし、納税者はそれで納得できるだろうか。議会の全員協議会で町の担当者から説明を聞いた議員から「もっと毅然(きぜん)とした態度を取るべきではないか」という意見も出たが、当然だろう。


 田辺市での問題を巡っては、漁協の田辺、湊浦両支所が07年度以降、補助金などを水増しで請求していたと第三者委が認定した。イサキやマダイなど5種の放流事業では、市の補助は全体の半分と決まっているのに、おおむね補助金だけで賄えるように漁協側が偽っていたことも判明した。


 第三者委は、公金を扱っている認識が漁協側に乏しく、「もらえるならそれに越したことはない」という考えがあったと指摘。組織の統治能力のもろさにも言及し、趣旨や目的、補助できる内容などを市と具体的に定めることを考えるべきだとまとめている。


 再発防止策として、これは重要な考え方だ。補助金は本来、それによって事業の効果が高まることに価値がある。交付や受給だけに関心が向かうと初期の目的から外れる。だからこそ厳正な制度とそれに基づく運用が求められる。


 和歌山南漁協と行政は、ともに誤った慣例を正さねばならない。家庭の台所にも直結する水産物に関係する問題であり、なおさらのことである。(N)