和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年05月21日(火)

県議の海外視察 公金を使う資格があるのか

 県議が2016〜18年度に実施した海外視察10回のうち3回分の報告書は、それぞれA4判用紙1枚だけだった。1人数十万円の公金をかけた視察が、わずかそれだけの報告書で済ませてよいというなら、あまりにも寂しい。公金を使う資格がないといってもよい。


 10回の視察には自民党の延べ39人、公明の1人が参加。観光客誘致や県産品販路拡大の調査研究などを目的に中国、台湾、マレーシア、シンガポール、インドネシアを訪れた。このうち報告書が1枚だけだったのは中国2回、台湾1回。それぞれ参加議員の連名で目的、場所、日程など最低限のことを記載しているだけだった。


 残り7回も各2〜7枚。なかには予定段階でも分かる行程を並べただけのものもあった。報告書は議長が決済することになっているが、議長が目を通さないまま処理されるケースもあるという。


 17年は10人がカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の視察にシンガポールへ出掛けた。だが、報告書は簡単で、なぜ10人が出掛ける必要があったのか、それをどう県政に生かそうとしたのかは分からない。18年にも、4人が同じ目的で同じ国を訪れているが、これまた同様だ。


 困ったことに、これらの報告書は県民が簡単に見られる仕組みにはなっていない。ほとんどの都道府県議会は、ネットで公開しているが、和歌山県議会では事務局に足を運び、情報公開請求の手続きを取る必要がある。交付までの日数は最長15日、写しは有料。少なくとも近年は、報道関係以外で請求した人はいない。


 藤山将材議長は「本議会で報告している。議事録もネットで公開していて問題はない」という。だが、ネットに慣れた人でもいつ、誰が代表して報告したのかという情報を事前に知っていないと、探すのは大変だ。


 一般質問は本来、県の考え方について質問し、施策の方向性や成果についての疑問点をただしたり提案したりする場である。視察に基づいた質問は歓迎だが、そうでない場合は、充実した報告書を納税者が手軽に読めるようにネットで公開する方が合理的だ。


 近隣の自治体では数十ページの報告書をネット上で公開したり、海外視察自体を自粛したりしている議会もある。県議会もまた報告書の在り方を改善し、ネットでの公開に踏み切ってもらいたい。


 具体的に何を調査研究したのか、行かないと分からなかったことは何か、それがどう県政発展につながるか。それを主権者である県民にどう伝えるのか。有権者に選ばれた議員として、まずはそうしたことに取り組む義務がある。


 近年、不適切な問題が相次いでいる政務活動費を使用した視察も同様だ。今後も報告書が数枚で終わり、ネットでの公開すらためらうような状態なら、視察自体の必要性も再考すべきである。


 県議選も近い。私たちもまた、納税者の一人として税金の重さを理解できる人を選びたい。(K)