和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2020年01月29日(水)

人類の謎や単婚・浮気理由も…生物学・進化論をユル~く描いた漫画に反響「生きることが楽しくなる」

種田ことびさんの漫画『ゆるゆる生物日誌』「ヒトはなぜ浮気するのか」より
種田ことびさんの漫画『ゆるゆる生物日誌』「ヒトはなぜ浮気するのか」より
 生物学や進化論といった難しい題材を、ユルすぎるイラストとわかりやすく説明した漫画『ゆるゆる生物日誌』が人気だ。「人類の始まり」や「猿人類の始まり」、「死の遺伝子」を始め、「人が単婚になった理由」や「人が浮気をする理由」もわかりやすく生物学や進化論の視点で描いている。大人はもちろん子どもからも支持を得ており、「生物学や進化論を通して世の中も少し理解ができるような気がする」「興味深い、納得」「わかりやすい」といった声が寄せられている。この漫画の作者である種田ことびさん(@kotobi00)に話を聞いた。

【傑作集】生物学・進化論の視点で描く「ヒトはなぜ浮気するのか」わかりやすく漫画で解説

◆自身が生物学を理解するために描いた“4コマ漫画”が始まり

――漫画を描き始めたのは、いつ頃からでしょうか?

【種田さん】 2018年1月、お正月明けだったと思います。NHK特別展『生命大躍進』を見に行ってから生物の進化について興味を持ち始めました。土屋健さんの『エディアカラ紀・カンブリア紀の生物』を読んでからより一層ハマり、いろいろな本を読み、自分で理解する為にノートに描き貯めたことが始まりです。「この長い文章は、結局こういうこと?」と4コマ漫画で描いてみて、「あ、わかりやすいぞ」と思ったんですね。さっと文章を読んで理解する人もいるんだろうけれど、私は頭の中で整理する為に、絵を描くことが一番理解しやすかったんです。

――もともと絵を書くことが好きだったのでしょうか?

【種田さん】 絵を描くことは昔から好きでした。大学はデザインを専攻し、デザイン会社に勤めていました。『ゆるゆる生物日誌』で描く絵は、気合いを入れて描く絵ではないので、単行本になったことが自分でも驚いています。絵とデザイン、どちらも「相手に伝える為に表現する」という点では特技を活かせたのかな、と思います。

――漫画を発信してみて反響がいかがでしたか?

【種田さん】 「勉強になります」「進化に興味を持ちました」といった声をいただきました。「小学生の子供と一緒に最新話を楽しみにしています」といったコメントをもらうと、本当に描いていてよかったなと思います。私は大人になってから進化論や生物学に興味を持ちましたが、子供の頃に知っていたらもっと学ぶ楽しさを知れたと思います。そういう意味でも子供たちが興味を持ってくれたということがすごく嬉しかったです。あとは、フォロワーがだんだん増えていくなかで、夫や友達に「スゴイね!インスタグラマーだね!」と言われました(笑)。

――漫画を描く楽しみ、大変さはどんなところですか?

【種田さん】 どうしても文章が少なくなってしまうので、どう絵で伝えるか、添える文章はどのようにまとめるかがすごく大変です。それにInstagramでは、一度に10枚しか画像があげられないので、区切りよくまとめるのも気を使います。でも、たくさんの方から反響をいただいた時や、書籍として形になったときは嬉しかったです。「将来の夢は漫画家」と子どもの頃に言っていたので、書籍が出来上がったときの嬉しさは、一生忘れません。(今年1月に単行本『ゆるゆる生物日誌 - はるか昔の進化がよくわかる』が発売)

◆「死」への恐怖心が和らいだ…漫画『死の遺伝子』がSNS上で話題に

――『ゆるゆる生物日誌』では、なぜ生物学や進化論について描こうと思ったのでしょうか?

【種田さん】 単純に生物学や進化論が面白かったからです。特に、リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』が人生で一番衝撃を受けた本でした。それまで専門書をあまり読んだことがなかったのですが、気がつくと夢中になっていました。ただ、600ページもある分厚い難しい本を読み切る大変さや、読むまでの道のりが長かった。私のように「興味はあるけど勉強が苦手、でも漫画は大好き!」という人に向けて、読みやすく漫画にして届けようと思いました。

――「ど素人が生命誕生についてふわっと勉強したので、ふわっと説明してみます」とInstagramでも書かれていますが、生物学や進化論は、どのように学んだのでしょうか?

【種田さん】 たくさんの本を読みます。熟読して自分がわかりやすい文章に変換してノートに書き込んでいます。本屋に立ち寄ると必ず生物学のコーナーで新刊が出ていないかチェックし、参考文献が載っているようなものを選んで買っています。正直、小説ではない分厚い本を読むのは疲れますが、新しい知識が得れる楽しみと気合いで読み切っています。

――他のジャンルでは考えなかったのでしょうか?

【種田さん】 興味のあるジャンルはいろいろあったのですが、たまたまその時にハマったのが進化論でした。自分のルーツを辿るような感覚が面白かったです。他にも宇宙や深海魚、量子力学など気になるものはたくさんあるので、今後、面白い本を読んだら漫画にするかもしれません。量子力学は、「シュレディンガーの猫」と「多世界解釈」を漫画にして投稿しています。この間読んだ本では、時間に関係する話が面白かったので、それも近々漫画にする予定です。

――生物の死について解説した漫画『死の遺伝子』がSNS上で話題となっています。なぜ、「死」について書こうと思ったのでしょうか?

【種田さん】 死ぬのは当たり前のことで、そこには意味はなく生物なら死んで当然、だと思っていました。でも、寿命がない生物がいて、「死」は進化の過程で手に入れたものだと知った時に、すごく衝撃を受けたんです。「死ぬ」というデメリットしかないように思えることが、実は生物の繁栄に必要なことだったということに驚きました。デリケートな内容なので描くか迷いましたが、私自身、死に対する考えが変わったし、「死がなんなのかわからない」という漠然とした恐怖心が少しだけ和らいだので、描こうと思いました。

◆漫画を通して読者にも“生きることを楽しもう”と思ってほしい

――「人が単婚になった理由」や「人が浮気をする理由」もわかりやすく生物学・進化論の視点で描かれています。題材に選んだ理由は?

【種田さん】 私たちホモ・サピエンス(人類を人類学上で分類するとき、現生人類のことをいう)の行動を人類進化学の視点から見ると、新鮮で面白く感じるからです。ヒトは必ずしも同じ行動を取るわけではないのですが、順序立てて行動を解説すると納得できることもありますし、改めて自分のことを知れた気がします。「なぜ人は◯◯するのか?」という問いは、「言われてみれば、なんでだろう?」と興味を持ちますよね。自分のことなのに考えたことがない人、気がつかなかったという人も多いと思ったので題材に選びました。

――生物学や進化論といった難しい題材をわかりやすく伝えるための工夫はありますか?

【種田さん】 なるべく言葉を噛み砕くようにしています。専門書では、難しい単語やフレーズを使っているので、読み慣れていないと読み疲れします。専門用語もあまり使わないようにして、できるだけありふれた言葉を選んで書くように工夫をしています。あとは、内容が複雑で絵も複雑だと目が疲れてしまうので、絵をシンプルにして画面がスッキリして見えるように気をつけています。

――関西弁でのコメントも添えられていますが、なぜ関西弁にしたのでしょうか?

【種田さん】 方言は親近感が湧き、時に可愛いらしくも見えます。遠く感じる古生物たちに親近感を持たせたくて使っています。おかしな姿形をしていても、見たことがない生物でも、実際に地球上に生きていて、私たちとDNAで繋がっている遠い親戚のように思ってもらいたかった。この漫画では、「みんな繋がっている」ということを描いているので、他人事と思わず自分たちのストーリーだと感じてもらいたい。その為に、方言を使っています。関西弁なのは、私が関西出身ということもあります。

――漫画を通して読者に伝えたいことはありますか?

【種田さん】 大げさですが、宗教では死に対する恐怖心を和らげる教えがたくさんありますが、私は生物学を学ぶことでも、生きるうえでの悩みや死の恐怖が和らぐと思っています。宇宙のことを考えると自分がちっぽけに思えますが、それと同じです。5億年前に生きていた1匹のアノマロカリス(古生代カンブリア紀の海に棲息していた捕食性動物)の生前のことを誰も知らないように、土に埋もれて「昔生きていたホモ・サピエンス」になるんだなぁと思うと、ちょっと足取りが軽くなるんですよね。「昔生きていたホモ・サピエンス」になるまで、読者にも“生きることを楽しもう”と思ってほしいです。

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