和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2025年02月13日(木)

助っ人は北陸企業 異業種の経営課題に挑戦、和歌山県田辺市で越境研修

紀南の中小企業の経営課題を解決する事業を提案する北陸企業のメンバー(和歌山県田辺市湊で)
紀南の中小企業の経営課題を解決する事業を提案する北陸企業のメンバー(和歌山県田辺市湊で)
 和歌山県紀南地方の中小企業の経営課題に、北陸の企業が挑む越境研修「北陸キジバト」の事業案発表会が21日、JR紀伊田辺駅前の田辺エンプラス(田辺市湊)であった。IT企業や製薬会社の社員が異なる地域、業種について考えて思考の幅を広げるとともに、連携した紀南の企業も「こんな発想はなかった」と刺激を受けた。


 企業研修を手がける「Jissen Lab.Initiative(ジッセン ラボ イニシアティブ)」(茨城県)が、新時代のビジネスリーダー育成を目指して企画した。石川、富山、福井3県の5企業から幹部候補の人材10人が参加。昨年8月から8カ月間の研修に取り組んでいる。

 北陸の企業と連携したのは田辺自動車学校(田辺市新庄町)、酒問屋の堀忠商店(同市高雄2丁目)、後工務店(上富田町生馬)の3社。地域の人口減少が進む中、各社とも収益や人材の確保が課題となっている。

 事業案の発表では堀忠商店に対し、「ルート配送の積載量、人的資源、倉庫の収容能力にも余裕があることから、これらを活用すれば無理のない範囲で新規事業に挑戦できる」として、「事業承継による食品卸参入」「田辺の梅酒巡り事業」「温泉活用事業」を提案した。

 「温泉活用は観光客がターゲットで人口減少の影響を受けにくい。料理や酒での活用が期待でき、地域に活気を与えることができる」として、温泉水で仕込む酒や飲食店への温泉水の卸、ゲストハウスへの温泉配達などの具体案を示した。

 堀忠商店の堀将和さん(40)は「温泉活用は考えもしなかった。課題もあるが、各案とも前向きに検討したい」と話した。

 田辺自動車学校には大学生の合宿免許利用と外国人観光客を対象した体験観光事業を組み合わせて、自動車学校を異文化交流の拠点にする事業、後工務店には空き家の大規模改修や外国人観光客への宿泊場所提供、伝統文化体験を取り入れながらの大工人材育成事業といった提案があった。

 堀忠商店のプロジェクトに参加したIT企業「ビジュアルソフト」(福井市)の辻利太郎さん(46)は「他業種の人材と一緒に研修できる機会はなかなかない。和歌山を訪れたのも初めて。卸売業は全く経験のない業態で、根本から勉強した。それぞれに本職が忙しく、打ち合わせの時間を調整するのも大変だったが、普段使わない脳の回路を刺激され、社会人として成長できた」と話した。