基準違反が常態化 女児死亡で検証委報告、和歌山県田辺の保育施設
和歌山県田辺市下万呂の認可外保育施設「託児所めぐみ」(休園)で2023年7月に、預けられていた生後5カ月の女児が死亡した事案を巡り、県検証委員会は14日、県に報告書を提出した。国の基準に違反して保育者不足が常態化していたことや、市の指導監督の問題を指摘し、再発防止策を提言した。
亡くなったのは田辺市を訪れていた際に預けられていた大阪府泉大津市の女児。うつぶせ状態で呼吸や意識がないのに施設長が気付き、病院に救急搬送されたが死亡が確認された。寝返りによる窒息死とみられる。
国の基準では、複数の乳幼児を保育するときは常時、保育従事者が複数必要と定めているが、当時は施設長1人が女児を含め乳幼児4人を見ていた。報告書によると、このようなケースは常態化し、事案発生まで3カ月で開所した72日中、7割近くの48日が1人での保育だった。22年度も開所234日中、101日が該当。検証委の聞き取りに対して施設長は、国の基準は認識していたが、自身に経験があることや、経営的判断から1人で保育していたと答えたという。
女児の状態は、ルールに基づき、5分ごとに確認したと話していたが、後に、死亡の数日後にまとめて記録簿に記入したことも判明。状態を確認していなかった可能性もあるという。
また、女児が寝ていたのは国の安全基準を満たすベビーベッドではなく、遊ばせる際などに使う囲い状のもので、目視しにくいものだった。敷布団も推奨年齢が2歳以上で、安全性に問題があったとした。
■市の指導にも問題
田辺市の指導監督の問題も指摘。原則毎年、立ち入り調査していたが、出勤簿やシフト表を確認せず、施設長の回答だけで評価し、事案発生まで職員不足の常態化に気付かなかった。さらに、15年まで3年連続で職員数不足を指摘をしていたのに、改善状況を確かめなかった可能性が高いとしている。
認可外保育施設に対する提言として、子どもの状態を細かく観察し記録▽国の安全基準に合格したベビーベッドを使用▽職員数の基準順守―など。行政には、立ち入り調査方法の再検討▽担当者間の丁寧な引き継ぎ▽改善の意思を見せない施設には形式的な文書指導を繰り返さず行政処分するなど指導監督の徹底―を求めた。
報告書を提出した検証委委員長の森下順子・和歌山信愛大学教授は「施設の問題と行政の指導監督の問題が重なり合った。重大事件が二度と起こらないようにしてほしい」と要望。受け取った県共生社会推進部の島本由美部長は「再発防止にしっかりと取り組んでいきたい」と答えた。
県は25年度、対策事業として、認可外保育施設に対する指導監督基準の明確化を目的とした県内市町村統一のルール策定や、睡眠中の事故防止機器の購入支援に取り組む予定。
県は報告書を14日付で、県内全市町村に送付。遺族にも直接、報告書を届け、説明したいとしている。
検証委の報告が出たことを受け、田辺市の真砂充敏市長は「亡くなられたお子さまに深く追悼の意を表し、心からご遺族の皆さまにお悔やみを申し上げる。今回の事案を真摯(しんし)に受け止め、今後このような痛ましいことが二度と起きることがないよう、子どもたちの健やかな育ちが実現できる環境づくりに全力で努めたい」とのコメントを出した。
亡くなったのは田辺市を訪れていた際に預けられていた大阪府泉大津市の女児。うつぶせ状態で呼吸や意識がないのに施設長が気付き、病院に救急搬送されたが死亡が確認された。寝返りによる窒息死とみられる。
国の基準では、複数の乳幼児を保育するときは常時、保育従事者が複数必要と定めているが、当時は施設長1人が女児を含め乳幼児4人を見ていた。報告書によると、このようなケースは常態化し、事案発生まで3カ月で開所した72日中、7割近くの48日が1人での保育だった。22年度も開所234日中、101日が該当。検証委の聞き取りに対して施設長は、国の基準は認識していたが、自身に経験があることや、経営的判断から1人で保育していたと答えたという。
女児の状態は、ルールに基づき、5分ごとに確認したと話していたが、後に、死亡の数日後にまとめて記録簿に記入したことも判明。状態を確認していなかった可能性もあるという。
また、女児が寝ていたのは国の安全基準を満たすベビーベッドではなく、遊ばせる際などに使う囲い状のもので、目視しにくいものだった。敷布団も推奨年齢が2歳以上で、安全性に問題があったとした。
■市の指導にも問題
田辺市の指導監督の問題も指摘。原則毎年、立ち入り調査していたが、出勤簿やシフト表を確認せず、施設長の回答だけで評価し、事案発生まで職員不足の常態化に気付かなかった。さらに、15年まで3年連続で職員数不足を指摘をしていたのに、改善状況を確かめなかった可能性が高いとしている。
認可外保育施設に対する提言として、子どもの状態を細かく観察し記録▽国の安全基準に合格したベビーベッドを使用▽職員数の基準順守―など。行政には、立ち入り調査方法の再検討▽担当者間の丁寧な引き継ぎ▽改善の意思を見せない施設には形式的な文書指導を繰り返さず行政処分するなど指導監督の徹底―を求めた。
報告書を提出した検証委委員長の森下順子・和歌山信愛大学教授は「施設の問題と行政の指導監督の問題が重なり合った。重大事件が二度と起こらないようにしてほしい」と要望。受け取った県共生社会推進部の島本由美部長は「再発防止にしっかりと取り組んでいきたい」と答えた。
県は25年度、対策事業として、認可外保育施設に対する指導監督基準の明確化を目的とした県内市町村統一のルール策定や、睡眠中の事故防止機器の購入支援に取り組む予定。
県は報告書を14日付で、県内全市町村に送付。遺族にも直接、報告書を届け、説明したいとしている。
検証委の報告が出たことを受け、田辺市の真砂充敏市長は「亡くなられたお子さまに深く追悼の意を表し、心からご遺族の皆さまにお悔やみを申し上げる。今回の事案を真摯(しんし)に受け止め、今後このような痛ましいことが二度と起きることがないよう、子どもたちの健やかな育ちが実現できる環境づくりに全力で努めたい」とのコメントを出した。