和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2025年03月16日(日)

那智の滝の価値を再確認

シンポジウムで講演する建築家の隈研吾氏(那智勝浦町那智山で)
シンポジウムで講演する建築家の隈研吾氏(那智勝浦町那智山で)
 和歌山県那智勝浦町は22日、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」登録20周年を記念したシンポジウム「那智大滝と地域の未来」を同町那智山で開いた。建築家・隈研吾氏らが講演し、参加者が熊野信仰の象徴である那智の滝の価値を再確認。保全し、未来へとつなげていくという思いを新たにした。


 シンポジウムは世界遺産の那智山青岸渡寺で開き、会場に約200人、オンラインで約150人が参加した。

 隈氏は「瀧の力、森の力」と題して講演。「人類の歴史は自然から遠ざかる坂道を歩んできたが、それが限界に来ていることを世界中が感じている。帰るべき自然の象徴の一つが那智の滝だ」と訴えた。

 その上で、那智の滝を訪れ、世界に知らしめたフランスの文学者アンドレ・マルローの思想に影響を受けたことや、木を活用した国立競技場など世界各国で手がけてきた自身の建築について説明。「マルローは滝について樹木と同じ、大地とつながった垂直だと言っている。どんな国でも感受性の鋭い人が自然の価値に目覚めている。先駆者の一人のマルローが那智の滝とつながっているのは、偶然のようで、ある種の必然」と述べた。

 奈良大学文学部の大河内智之准教授は、那智の滝の信仰について講演。国際熊野学会の山本殖生代表委員は那智参詣曼荼羅(まんだら)について解説し、熊野那智ガイドの会の生熊みどりさんが絵解きを披露した。熊野自然保護連絡協議会の瀧野秀二会長は那智の滝周辺の植生環境について講演した。

 最後に世界遺産・熊野那智大社の男成洋三宮司が「ご神域としてあがめられてきた那智の山を保全することがご神体の那智の滝を守ることになるし、紀伊半島大水害で大きな被害を受けた那智川沿いの減災にもつながる」と来場者に呼びかけた。