和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2022年05月28日(土)

災害に備え復興計画策定を 田辺市でまちづくり講演

防災と復興のまちづくりを考える集い(16日、和歌山県田辺市新屋敷町で)
防災と復興のまちづくりを考える集い(16日、和歌山県田辺市新屋敷町で)
 南海トラフ地震の発生に備え、事前に被災後のまちづくりを考える集い(実行委員会主催)が16日、和歌山県田辺市新屋敷町の紀南文化会館であった。防災の専門家と東日本大震災の被災地で復興に取り組む自治体職員が講演し、災害が起きるまでに復興計画を策定する重要性を説いた。

 関西大学社会安全学部の河田恵昭特任教授が「巨大地震が来る前に何をしておくべきか」を演題に基調講演した。

 想定される被害では最悪となる南海トラフ地震が起きた場合、田辺市は地震の揺れで1万100棟、津波で1万1600棟が全壊被害を受け、死者は1万5600人という被害想定が出ていることを示し「そうならないためにどう準備するか。市民は全員、人ごとではない」と強調した。

 さらに、東日本大震災の事例を報告しながら「復興が遅れると生活再建できない住民が流出して人口が減少する。人材が不足してまちづくりが後回しになる」との悪循環を示し、被災前に復興計画を作る必要性を強調。田辺市が被災前にやらなければならない準備として、地籍を確認(土地の相続を進める)▽仮設住宅の建設地▽復興まちづくりに向けた体制や業務の具体化を進める▽事業手法を整理する▽田辺市の地場産業を強化▽公共施設の被災対策▽復興計画に対する市民との合意形成を図る―などを挙げた。

 この後、東日本大震災からの復興に取り組んできた岩手県陸前高田市の阿部勝地域振興部長が「陸前高田市の復旧・復興について」を演題に事例を報告した。

 阿部部長は50歳の時に被災。発生時には市庁舎の屋上に避難して難を逃れたが「仲間が波にさらわれているのにどうすることもできない状況だった」と振り返った。

 沿岸部では高さ5・5メートルの防潮堤が全壊し、中心市街地は壊滅状態となった。市民の7・3%にあたる1759人、職員の4分の1(111人)が犠牲になったという。

 阿部部長は限られた国の復興メニューの中から、いかに地元に合った事業を進めるかに留意したという。商工会と連携した中心市街地の復興では「みんなでもう一回まちをつくろうと話し合いながら取り組んだ」と述べた。

 防潮堤の建設では、市民のさまざまな意見を参考に、高さ12・5メートル、全長約2キロの防潮堤の完成に至ったという。

 阿部部長は「災害によって、地域のお祭りも文化もコミュニティーも損なわれる。大事なのは日常からの協働のまちづくり。田辺では、みんなの知恵と力を合わせて災害に備えてほしい」と締めくくった。