和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年04月18日(木)

空き家売買促進へ簡易鑑定士育成 印南町のシルバー人材センター

午前中は座学で古民家に関する基礎知識を学んだ(和歌山県印南町印南で)
午前中は座学で古民家に関する基礎知識を学んだ(和歌山県印南町印南で)
現地研修では木づちでたたくなどして内部を調査した(和歌山県印南町印南原で)
現地研修では木づちでたたくなどして内部を調査した(和歌山県印南町印南原で)
 和歌山県印南町内で増加している空き家について売買を促そうと、同町シルバー人材センターはこのほど、家屋の耐久性などを確認する民間資格「木造住宅簡易鑑定士」育成のための技能講習会を町内で開いた。座学による講習、実際の古民家を使った実地研修で受講者が専門知識を身に付けた。

 木造住宅簡易鑑定士は、建物の状態を簡易的に調査し、流通可能な建物か、解体して建て替えた方がいいかを判断する調査を担う。売買時に建築士が行う調査とは異なるが、行政が地域の空き家情報を把握する場合などに活用されている。

 資格は全国古民家再生協会(東京都)が2018年から、全国のシルバー人材センターと連携して人材育成しており、今回県内の人材センターと初めて取り組んだ。印南町シルバー人材センターの会員とそれ以外から計18人が参加した。

 午前中は同町印南の町公民館で座学があり、全国古民家再生協会理事の河野公宏さんが、鑑定に必要な基礎知識を解説した。建物の鑑定では20の調査項目について、現地で目視や書類などで調査する。面積や構法、使用されている資材の他、外壁や屋根からの雨漏り、改修している履歴、シロアリといった害虫による被害、壁面の傾きといった調査のポイントを紹介。講習後には試験をした。

 午後からは、同町印南原にある築約70年の空き家を使った実地研修があった。大工の新谷徳幸さん=和歌山市=が立ち会い、受講者が現地調査で必要な確認ポイントや知識を教わった。

 内部は床などが老朽化しており、柱などを木づちでたたきながら調べ、実際の鑑定同様に調査票に記入した。受講者は全員座学の試験を合格しており、講習を終えて資格認定を受けた。

 簡易鑑定の調査費用は、一つの建物に対し3万円で、調査は2人一組で行う。

 同町は、住宅が少ない町の課題解決策として、空き家の所有者と、利用希望者とをつなぎ情報提供する窓口「空き家バンク」を設けている。町シルバー人材センターは、木造住宅簡易鑑定士を地元で育成することで、空き家登録の推進につなげたいという。

 同センターの田中統事務局長は「資格所有者による専門的サポートで、空き家登録のハードルを低くすれば、町内の住む場所を増やすことができると思う。民間として、地元の住環境整備や人口減少対策の一助になれば」と話している。