和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2025年05月22日(木)

津波から守った神に感謝 鹿島に渡り明神祭、和歌山県みなべ町沖

明神祭で舞を奉納する巫女(和歌山県みなべ町沖の鹿島で)
明神祭で舞を奉納する巫女(和歌山県みなべ町沖の鹿島で)
浜を掘って「宝」を探す子どもたち(和歌山県みなべ町沖の鹿島で)
浜を掘って「宝」を探す子どもたち(和歌山県みなべ町沖の鹿島で)
 和歌山県みなべ町沖の鹿島に祭られている鹿島神社・元宮で3日、明神祭が営まれた。江戸時代に鹿島の神が津波から住民を守ったと伝えられており、その感謝と災厄消除を願う、1年に1度の島内祭典。総代や地元の人らが船で渡って参拝し、巫女(みこ)がみやびやかに舞を奉納した。

 神事では亀井隆行宮司(51)が祝詞を上げ、総代や各地区の区長、埴田区の区会議員や町自主防災会の役員らが玉串をささげた。

 巫女は南部高校2年の木田美々花さん(16)と深山紅愛さん(16)、田辺高校2年の山下小有紀さん(16)、神島高校2年の中嶋渚さん(16)。木田さんと深山さん、山下さんの3人が「豊栄(とよさか)の舞」を舞い、中嶋さんは神事の典儀(司会進行役)を務めた。

 鹿島は沖合に浮かぶ無人島で、奈良時代以前に常陸の国(茨城県)の鹿島神宮から勧請したと伝わる鹿島大明神が祭られている。江戸時代の1707(宝永4)年と1854(嘉永7)年に起こった地震の津波から地区住民を守ったといわれ、島全体が信仰の対象となっている。

■「宝探し」に600人

 鹿島神社は祭りに合わせ、幼児から小学生を対象にしたイベント「鹿島で宝探し」を開いた。晴天の下、約600人の親子連れらが船で鹿島に渡り、自然の中で宝探しを満喫した。

 子どもたちに鹿島に渡る機会をつくり、祭りや地域の文化・歴史に触れてもらうことが目的。今年で2回目。

 家族で訪れた南部小学校2年生の立花叶樹君(7)は「船に乗って楽しかった。宝は5分ぐらいで見つけたよ」と笑顔で話した。

 プラスチック製のカプセルに入った「宝」は、対岸の鹿島神社(みなべ町埴田)の社務所に持っていき、商品券や食事券、駄菓子などの景品と交換した。鹿島神社前には出店も並び、大勢でにぎわった。

 亀井宮司は「天候に恵まれ、多くの方に参拝していただき、宝探しにも参加していただいて良かった」と話した。

■オオタニワタリ手入れ 埴田区

 鹿島ではこの日、地元埴田区の区会議員ら12人が、島に植栽されたオオタニワタリ(チャセンシダ科)を手入れするとともに、参道を清掃した。

 オオタニワタリは鹿島で数多く自生していたが、乱獲や台風などによって姿を消しつつあったため、約20年前から住民有志や埴田区が復活を目指して植栽してきた。

 磯嵜秀喜区長(62)は「過去の大津波から地区を守ってくれた島を、これからも大切にしていきたい」と話した。