和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年10月10日(木)

過疎の集落をクマノザクラの里に 古座川町小森川で植樹

クマノザクラの苗木を植える野口貢盟さん(左)と矢倉寛之さん=27日、和歌山県古座川町小森川で
クマノザクラの苗木を植える野口貢盟さん(左)と矢倉寛之さん=27日、和歌山県古座川町小森川で
シカやウサギによる食害を防ぐ目的で苗木を囲った枠に試しにテープを巻いた。別の苗木は金網で囲った
シカやウサギによる食害を防ぐ目的で苗木を囲った枠に試しにテープを巻いた。別の苗木は金網で囲った
 過疎化が深刻な状況にある和歌山県古座川町の小森川地区で27日、畑地跡などにクマノザクラの苗木8本が植えられた。同地出身の養蜂業、野口貢盟さん(57)=串本町潮岬=が植樹場所を用意し、樹木医の矢倉寛之さん(38)=古座川町長追=が苗木を提供した。2人は「クマノザクラの名所をつくり、それがクマノザクラの母樹林にもなればうれしい」と期待している。

 小森川地区は県の名勝・天然記念物「滝の拝」から北へ約12キロの集落。15戸ほどが暮らしていたが、少子高齢化の影響で空き家が増加。今では住人が野口さんの80代の両親の2人だけという。

 「このままでは集落が消滅する」と危機感を強めた野口さんが、地域を活気付けようと植樹を計画。実家の周辺で土地所有者に協力を求め、許可を得て植樹できる場所をつくるなど準備した。

 矢倉さんによると、クマノザクラの種や挿し穂を採取する母樹林はどこにもなく、今回が初めての試み。「母樹林をつくる場合、周りにソメイヨシノやエドヒガンといった外来のサクラが少ないことが条件。その点、小森川地区は外来のサクラが少なく、隣接する集落とも4キロ以上離れている」と言い、適地だという。

 この日2人が植えたのは、矢倉さんが小森川地区の周辺地で採取し、一昨年挿し木して育てた高さ約60センチの苗木1本と、種を昨春発芽させて育てた高さ20~30センチの7本。4、5年で開花するとみられる。

 シカやウサギによる食害を防ぐ目的で、苗木を枠で囲み、試験的に金網や赤色のテープを張り巡らせた。

 植樹は来年以降も続け、小森川地区をクマノザクラの里にしたい考えだ。

 クマノザクラは、国内の野生のサクラとしては約100年ぶりの新種と分かり、2018年に発表された。開花した姿が美しく、観賞木としての利用が期待されている。古座川町では「町の花」に指定している。