和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年04月25日(木)

町は不問にせず対応を 日高漁協の補助金虚偽申請

漁協補助金等の調査報告をする特別委員会の玉井伸幸委員長(5日、和歌山県みなべ町芝で)
漁協補助金等の調査報告をする特別委員会の玉井伸幸委員長(5日、和歌山県みなべ町芝で)
 紀州日高漁協(本所・和歌山県御坊市)が、みなべ町からの補助金受給に際して虚偽の申請をしていた問題を調査してきた町議会特別委員会は報告書をまとめ、5日開会の町議会3月定例会で報告した。漁協が虚偽の領収書を添えて報告したことは不正であり、町としても不問ではなく、漁協に何らかの対応を求めるべきだと指摘。問題の背景には町のチェック体制の不備もあったとし、補助金の在り方として、公益、公平な運用を保つために「補助金交付要綱」を設置することや、事業内容や経費の適切さなどの検証が必要だとした。

 委員長の玉井伸幸議員が報告した。報告書によると、補助金はみなべ町内の三つの漁港で安全利用にかかる啓発、清掃、漁業者・遊漁者間の連絡調整などを目的に設けられ、原資には漁港に係留する漁船以外の船の使用料を充てていた。

 補助金の目的の一つ、清掃は補助金の有無にかかわらず必須で地先組合(地元漁業者)によって日常的に行われていたが、地先組合に対して漁協からは労務費として支払われていなかった。にもかかわらず、地先組合が受け取ったとされる領収書が漁協南部町支所、漁協を通じて、町に報告書として提出されていた。それが漁協が認める虚偽だとした。

 一方で、漁協は日常的に南部町支所管内の施設の保守・管理、修繕などにかかる工事をし、その額は毎年の補助金額を上回っており、結果的に補助金はここに使われていたとみなすことができる。漁協の修正報告の振込書の写しからも信ぴょう性は高いとした。

 その上で、委員会の見解として、補助金使途について、不正使用や流用、使途不明などを疑わせる余地はなく、使われ方に特段大きな問題はなかったと結論付けたが、補助金本来の目的に照らし合わせると「決して適正であったとは判断できない」とした。

 また、支払っていない事柄について虚偽の領収書を添えて報告したことは、不正といわざるを得ないとした。そのため「町は漁協に対して、何らかの対応を求めるべきだ。少なくともこのまま不問になってはならないのではないか」と町の対応を求めた。

 町の事務取扱についても、領収書の不自然さに気付かなかったなどずさんな箇所が見られ、事業内容を掲げた補助金でありながら、団体の活動を後押しする位置付けになっていたとみられ、それがチェックの甘さにつながったのではないかと指摘した。

 今回、漁協補助金以外の20の補助金についても調査し、特段の問題視すべき点はなかったが、善処すべき点があり、担当課に伝えるとした。

 調査結果を踏まえ、町の補助金の在り方として、公益性や公平性などを担保する「補助金交付要綱」の設置▽事業内容や目的がニーズに合致しているか、経費が適切か効果はどうかを定期的に見直す検証▽担当者だけでなく、担当課共同責任としての認識―の3点を訴えた。

 取材に対し、小谷芳正町長は、2019年度からは町が漁協と、漁港施設の点検清掃などの漁港施設等管理業務委託契約を締結したことにも触れ「改めるべきところは改めて、補助金の交付要綱がない部分は作っていきたい。今のところ返還や職員の処分については考えていない」と述べた。

 町産業課によると、虚偽の報告があったと確認できたのは、12~17年度。補助金額は年によって異なるが、年間約80万~100万円を支出してきたという。