和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2021年09月20日(月)

クマノザクラ観察ツアーに60人 樹木医の矢倉さんがタイプ木案内

満開になったクマノザクラのタイプ木(和歌山県古座川町池野山で)
満開になったクマノザクラのタイプ木(和歌山県古座川町池野山で)
クマノザクラについて解説する矢倉寛之さん(左)=和歌山県古座川町池野山の道の駅虫喰岩で
クマノザクラについて解説する矢倉寛之さん(左)=和歌山県古座川町池野山の道の駅虫喰岩で
 和歌山県の古座川町観光協会は14日、同町池野山で見頃を迎えたクマノザクラのタイプ木を観察するガイドツアーを開いた。町内に住む樹木医の矢倉寛之さん(38)が案内し、約60人が花見を楽しみながら生態や保全の大切さについて学んだ。

 クマノザクラは2018年、国内の桜の野生種としては約100年ぶりに新種と発表された。町は同年、町の花に指定。町と町観光協会が矢倉さんの協力でイラストマップを作り、お薦めの木を紹介するなどPRしている。現在、淡いピンク色の花が各地で見頃を迎えている。

 参加者は道の駅「虫喰岩」に集合し、山の所々に咲いているクマノザクラを観察しながら現地へ向かった。途中、矢倉さんは「開花の時期が早く、美しい。個体差が大きく、咲く時期や色など一つ一つに違いがあるのが魅力。お気に入りを見つけて楽しんでほしい」と呼び掛けた。

 約800メートル歩くと、ひときわ多くの花を咲かせたタイプ木に到着。参加者は写真撮影するなどした。タイプ木は、新種と特定する論文を発表する際、標本にされた唯一の木。地元の児童が昨年作った木製の看板の前で矢倉さんが解説した。

 同町にはもともとクマノザクラとヤマザクラの2種類が自生していたが、植樹などで地域外から他品種の桜が入って来て交配を繰り返すと、クマノザクラの存在が脅かされるという。矢倉さんは「皆が良いことだと思っている植樹がクマノザクラを追い込んでいる可能性がある」と注意を促した。また、山の斜面で木々の間に咲いているクマノザクラについて「他の木に負けて弱々しく咲いている。昔は、まきの欲しい人が周囲の木を切っていたが、今は適度に伐採して明るい場所をつくってやらないと維持できない」と説明した。

 新宮市熊野川町の自営業、平野皓大さん(55)は「家の周囲にも咲いているが、タイプ木は初めて見たのでよかった。矢倉さんのクマノザクラへの思いを感じた」と感心した様子。那智勝浦町狗子ノ川のジオパークガイド、橋口雅美さん(56)は「クマノザクラは、はかなさが魅力的だと感じた。守っていくために自分も何らかの形で関わることができたら」と話した。