和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年07月18日(木)

闘鶏神社創建記念でシンポ 熊楠賞の櫻井さんが神社の役割話す

「神社と日本人の暮らし」と題して講演する櫻井治男さん(21日、和歌山県田辺市東山1丁目で)
「神社と日本人の暮らし」と題して講演する櫻井治男さん(21日、和歌山県田辺市東山1丁目で)
 世界遺産の闘鶏神社(和歌山県田辺市東陽)創建1600年を記念したシンポジウムが21日、田辺市東山1丁目の紀伊田辺シティプラザホテルであった。南方熊楠の神社観から神社と日本人のつながりを読み解く基調講演や、「熊野の奥深さ」をテーマにした公開討論会があり、230人が聴いた。

 田辺市とその周辺地域の各種団体でつくる「世界遺産闘鶏神社創建千六百年記念事業推進協議会」(榎本長治会長)主催、紀伊民報など後援。

 シンポジウムでは、昨年、南方熊楠賞を受賞した皇學館大学特別招聘(しょうへい)教授の櫻井治男さんが基調講演。「大明神や権現などの神々をたたえて付け加えられる『神号』、神宮や宮などの神社に付けられた『社号』など、神社によって称号がある。現在ある呼び名は、これまでの歴史や由緒によって継承されたり、変更されたりしている」と説明した。

 「近代の神社制度下では、社号に一定の区分秩序がもたらされて呼び名の変更があったり、建物の設備の条件に合うものでなければ神社と認められないとされたりした。そんな条件に疑問を抱いたのが、南方熊楠だった」という。

 「熊楠の神社観から、神社には主に三つの役割が見いだせる」と熊楠の文書から紹介した。一つは歴史や文化の継承の場としての役割で、熊楠は「立派な歴史書に載っていなくても、地方ごとに伝承、伝統などがある」と文書で訴えた。

 二つ目は地域の社交の場としての役割。神社の祭りでは、地域の皆が集まって親睦を深め、地域経済の循環も生まれる。三つ目は自然環境を保持する役割。島全体を神と捉えて人の手を加えることをしなかったり、生き物を神の使いとすることで守ったりして共生してきた。

 「闘鶏神社は地域の人々にとって、この地の平安と繁栄を守ってくださるよう願う存在として祭られている」と話し、最後に「熊楠の神社観を踏まえて、私たちの暮らしの中での神社の役割をもう一度振り返ってみては」と呼び掛けた。