和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年10月05日(土)

シオマネキに恋の季節 田辺市の干潟、絶滅の心配も

はさみを振り上げるシオマネキ(和歌山県田辺市新庄町で)
はさみを振り上げるシオマネキ(和歌山県田辺市新庄町で)
振り上げたはさみが白い扇を振っているように見えるハクセンシオマネキ。小さなカニはチゴガニ(和歌山県田辺市新庄町で)
振り上げたはさみが白い扇を振っているように見えるハクセンシオマネキ。小さなカニはチゴガニ(和歌山県田辺市新庄町で)
 ジューンブライドの6月、和歌山県田辺市新庄町の内之浦干潟親水公園で、雄の片方のはさみが大きいカニ「シオマネキ」の仲間が、恋の季節を迎えている。ここで見られるのはシオマネキとハクセンシオマネキだが、近年、干潟環境が悪化し、その数を減らしている。カニに詳しい元高校教諭の丸村真弘さん(65)=田辺市新庄町=は「シオマネキはこの公園で数ペア程度しかいないのでは」と絶滅を心配している。

 両種は、干潟の潮が引くと、穴からはい出してきて小さい方のはさみを使って餌を食べるが、物影を察知するとすぐに巣穴に隠れてしまう。特にシオマネキは警戒心が強い。この時季、雄は特徴である片方の大きなはさみを振り上げて雌を誘うウエイビングという行動が見られる。

 丸村さんによると、以前は内ノ浦の干潟に流れ込む三つの川のうち、中央の仙波谷川がシオマネキ類の主な生息地だったが、最上部にミシシッピアカミミガメが大繁殖して以降、見る影もないという。現在は北側の東谷川でほそぼそと生息している程度と指摘する。

 シオマネキは甲幅約4センチで、はさみは赤っぽい色をしている。和名は、干潮時に大きなはさみを上下に動かす姿が潮を招いているように見えることに由来する。ハクセンシオマネキの甲幅は約2~2・5センチ。雄の大きなはさみを振る姿が白い扇を振って踊るように見えるからという。

 近年、海岸開発などによって生息地である干潟が全国的に減ってきて、両種とも激減している。環境省のレッドリストで絶滅危惧2類に分類されている。

 シオマネキ類など干潟の生き物の生態を研究する和歌山大学の古賀庸憲教授(57)は、県内でシオマネキが最も多い紀ノ川の干潟でも、その数はせいぜい数百匹とみている。以前は日高川の干潟にも同じくらい生息していたが、10年ほど前の大雨か台風の影響でごみが干潟に堆積して以来、数が減っているという。ハクセンシオマネキは紀ノ川や和歌浦、有田川の干潟が多いという。