和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2020年07月14日(火)

『愛の不時着』『梨泰院クラス』…若年層に裾野を広げた韓ドラ 『冬ソナ』以来の再ブームの必然性

Netflixで異例のヒットを記録した韓国ドラマ『愛の不時着』
Netflixで異例のヒットを記録した韓国ドラマ『愛の不時着』
 Netflix独占配信の韓国ドラマ『愛の不時着』や『梨泰院クラス』が、SNSやメディアで連日取り上げられるなど、かつての『冬のソナタ』以来の韓国ドラマブームとなっている。ファン層の裾野が若年層にも拡大しており、老若男女問わずその熱や規模もかつてのブームを超える勢いだ。動画配信サービス時代に生まれた新たな韓国ドラマブームの必然性について、その火付け役でもあるNetflixの広報担当者に聞いた。

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◆“海外作品=ハリウッド”ばかりが日本で話題になる構図ではない配信時代

 日本における第1次韓流ブームとなった『冬のソナタ』(2003年から日本放送)以来のムーブメントを巻き起こしている『愛の不時着』(TvN/19年12月〜20年2月放送)と『梨泰院クラス』(JTBC/20年1月〜3月放送)。どちらも韓国での放送終了と同時にNetflixで全世界配信され、日本では4月頃からじわじわとSNSで話題が広がり、メディアで続々と取り上げられるとともに韓流ブーム再来と呼べるヒットへとつながった。その背景には、近年の映像メディアのパラダイムシフトのなかで、動画配信サービスが昨年からシェアを急拡大していたこと、そしてコロナ禍によってエンタテインメントのあり方が変わったことがある。

 まず、韓流ブーム再来となったこのムーブメントがかつてと大きく異なるのが、『冬ソナ』時代のファンは年配女性層が中心だったのに対して、若年層にまで広く拡大していること。Netflix広報担当者は「ユーザーがインターネットを積極的に利用している層であることや、SNSでの反響を見ていますと、若い層も含めて幅広い世代の方にご覧いただいているようです」と手応えを得ており、韓国ドラマが若い世代にも支持を受けるコンテンツになっていることがわかる。EXILE・岩田剛典やオリエンタルラジオ・藤森慎吾、桐谷美玲、河北麻友子、藤田ニコルなど、男女問わず多くの芸能人らも前述の2作について絶賛している。

 その背景には、動画配信サービスの普及拡大とともに、外国作品に触れる機会が増え、視聴ハードルが下がっていることがある。「多言語で作品を配信しているので、海外作品であっても手軽に観ることができます。必ずしもハリウッドの作品ばかりが日本で話題になるという構図ではなくなっています」(Netflix広報担当者)。若い世代にとっては、BTSやTWICEといったK-POPの世界的ヒットなどから韓国エンタテインメントが身近になっていることも追い風になったことが予想されるが、もはや「外国作品といえばハリウッド」という時代ではない。言語や制作国ではなく、その作品性で評価される、コンテンツ力の高い作品がヒットする、新たな時代を迎えていることが示されている。

◆日本でも地上波でリメイク作品を続々輸入、産業基盤の厚い韓国エンタメ界のコンテンツ強度

 もともと韓国は、エンタテインメント産業の地盤が厚い。国策として同産業を支援しており、助成金や人材発掘のための公募事業などの仕組みが整備され、若手クリエイターの育成にも積極的だ。日本の東京大学にあたる国立のソウル大学のほか、多くの4年制大学に芸術学部が設けられ、演劇映画学科からは著名な映画監督が多く輩出されている。また、ソウルの演劇街・大学路には50を超える小劇場で毎日200演目ほどが上演され、頭角を現す若手脚本家や俳優が映像界へ引き上げられる仕組みもある。

 テレビドラマでは、制作プロダクションが企画をテレビ局に売り込むのが主流だが、“おもしろい作品であればヒットする”厳しくも健全な競争にさらされる実力主義の世界。そこには、『愛の不時着』を手がけたスタジオドラゴンのような、売れっ子・脚本家を多数抱え、確実にヒット作を生み出す人気プロダクションが群雄割拠している。前述の2作のような良質なコンテンツが生まれる地盤が、しっかりと形成されていることも大きい。

 そうした地盤から生まれるコンテンツ強度の高い韓国ドラマは、近年日本でも数多くリメイクされている。6月27日より放送の『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系/原作:ミッドナイト・ランナー)をはじめ、『サイン―法医学者 柚木貴志の事件―』(2019年7月フジテレビ系/原題:サイン)、『TWO WEEKS』(2019年7月フジテレビ系/原題同)、『ボイス 110緊急指令室』(2019年7月日本テレビ系/原題:ボイス~112の奇跡~)、『グッド・ドクター』(2018年7月フジテレビ系/原題同)など、枚挙に暇がない。かつて『花より男子』など、日本のドラマもアジア各国でリメイクされていたが、近年は良質な脚本やコンテンツ不足から韓国ドラマに頼る傾向にある。リメイクと知らず触れていた視聴者も多く、そうした流れからも現在の韓国ドラマブームは必然と言える。

 また、ドラマというコンテンツとしては、その尺にも、深くハマる人が続出した要因はある。一般的な日本ドラマは1話45分ほど全10話だが、韓国ドラマは1話70分ほどで全16話と長い。ハマるとボリュームのある重厚なストーリーと世界観に飲み込まれて、深くその世界に落ちていく。それだけに熱烈なファンを生み出す土壌があり、イッキ観ができ、何度でも繰り返し視聴できる動画配信サービスと相性がよい。

 Netflix広報担当者は「次のエピソードが配信されるのを待つことなく、好きな時にまとめて観るなどフレキシブルな楽しみ方ができることが魅力」とするが、レンタルでは不可能であったイッキ観ができることも(シーズンの前半と後半でレンタル開始日が月をまたぐなどブランクがあった)、一般層を取り込み、視聴熱を上げ、口コミを広げた要因だろう。それだけにライトユーザーの離脱者も少なくなっているはずだ。

◆ドラマ以外にも日本の先を行くエンタメシーン、韓ドラブーム到来の必然性

 多くの女性に愛される王道ラブストーリーや愛憎劇のほかにも、反権力志向が強く、庶民が権力を懲らしめる、金持ちや権力者を追い落とすといった流れの復讐劇は、本来日本ドラマのお家芸であった。前述の2作は、家族や恋人への愛、仲間との絆、困難を乗り越える努力や勧善懲悪の復讐劇といった、視聴者の感情を揺さぶる普遍的な要素に加え、大枠ではファンタジーも含みながら、詳細においてはリアルを追求。かつての日本ドラマを彷彿としつつ、巧みに描かれた脚本と演出でより質の高い作品を生んでいる。その力強いばかりの愛憎劇が生み出すカタルシスや安心感が、コロナ禍の不安な生活のなかの求心力になった面も大きいだろう。

 Netflix広報担当者は「『愛の不時着』(2月23日配信)と『梨泰院クラス』(3月28日配信)は、6月時点で配信開始から連続で総合トップ10(週間)入りしています。これほどまで長期間にわたり多くの方にご覧いただいているのは初めてです」とその反響の大きさに驚く。視聴アクセスの簡便さから、レンタル時代を凌ぐロングヒットになることが予想される。移り変わりの激しい時代にこうしたブームの長さも、新たな特徴のひとつだろう。そして、韓ドラブームの次なる期待作として、Netflix広報担当者は『サイコだけど大丈夫』(6月20日より毎週配信)、『サンガプ屋台』(2020年7月より全話配信)、『Record of Youth(原題)』を挙げ、続々と作品が控えている。

 作品力と時代性によって巻き起こされた新たな韓国ドラマブームだが、BTSやTWICEといったK-POPをはじめ、『PRODUCE 101』や『Nizi Project』といったオーディション番組、コロナ禍で圧倒的な差が出たライブ生配信サービスなど、韓国ではエンタテインメントシーン全体を通して良質なコンテンツを生む土壌が形成されている。ドラマだけでなく、そうした現状からも日本のエンタテインメントシーンが、韓国に先をいかれた感がある。

 昨年ヒットしたNetflixオリジナルドラマ『全裸監督』が海外でも注目を集めたが、作品力本位になる配信時代に、日本から世界的なブームを生む可能性も十分に秘めている。今後、日本から世界に羽ばたく新しいムーブメントに期待したい。

(文/武井保之)

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