和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2020年12月03日(木)

青年よ、古道を歩け!!~新人記者の熊野詣で~(7)/ゴールは次へのスタート

古道からそれ、ちょっと寄り道。大斎原を望む展望台からの景色に言葉を失った
古道からそれ、ちょっと寄り道。大斎原を望む展望台からの景色に言葉を失った
熊野古道地図
熊野古道地図
青年よ、古道を歩けタイトルカット
青年よ、古道を歩けタイトルカット
 伏拝王子の手前にある伏拝の集落に入ると、アスファルトの道に出た。左手に果無山脈を望みながら集落内の古道を歩く。この果無山脈を越えて、遠く高野山へと至る古道が通っているという。

 集落を抜け、小さな丘を越えると、左手に小さな茶屋。そこから21段の石段を上ると伏拝王子。遠くに熊野本宮大社の旧社地大斎原(おおゆのはら)が望める場所である。都から熊野を目指した古人たちは、長い旅の目的地を目にして、感激のあまりひれ伏して拝んだそうだ。

 茶屋のそばには「ほんまもん」と書かれた碑の立つ民家があった。NHK連続テレビ小説の舞台になった場所だというので訪ねると、この家に住む松本茂子さん(66)が迎えてくれた。語り部でもある松本さんは「地元の人には自分から声を掛けることが大事。そうすると旅が楽しくなり、どんなことがあったか思い出せる」と旅の醍醐味(だいごみ)を教えてくれた。思わず私もこれまでの旅を振り返り、出会った人たちの顔を思い浮かべてほっこりとした気持ちになった。

 美しい茶畑の絶景を楽しんでから、再び土の道を進む。道はよく手入れされて歩きやすいが、今度は顔に向かって飛んでくる虫との戦いだ。

 道路上に架かった小さな橋を渡ると三軒茶屋跡。高野山方面から小辺路を歩いてきた巡礼と中辺路からの巡礼が合流する場所で、かつては大いににぎわったという。

 ここで一服し、しばらく歩いてからちょっと寄り道。聞けば、熊野川と大斎原にそびえる日本一大きな鳥居の見える展望台があるという。

 ほんの10分足らずで展望台に着く。眼下に雄大な熊野川と本宮大社の大鳥居が見える。そこが目的地だ。「もうすぐだ。頑張ろう」。最後の気合が入る。

 展望台から元の道に戻り、祓殿王子を過ぎると、目指す熊野本宮大社。発心門王子からは3時間ほどの行程だ。

 「おつかれさま」と笑顔で迎えてくれた九鬼家隆宮司(63)の案内で神門をくぐり、多くの参詣者が目指した本殿の前に立った。

 「速玉大社で過去を振り返り、那智大社で現在の自分を確認する。そして本宮大社でどんな生き方で人生を歩むか、未来を誓う。熊野は過去、現在、未来をたどり、よみがえる場所です」。九鬼宮司からそんな説明を聞き、熊野信仰の奥深さの一端に触れた気がした。
(おわり)
◇  ◇

 今回の取材は、地元に就職したからこそできたこと。途中、ほんのさわりのコースを歩いただけであり、私の熊野三山への旅は始まったばかりだ。この旅の楽しさをもっと深く味わいたい。まずは、一緒に歩いてくれる友達を見つけることにしよう。(中能梨子)