和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2019年10月21日(月)

若者の流出対策 仕事、暮らしの魅力発信を

 若者の地元離れが止まらない。県などによると高校生の2割超、大学など県外に進学した学生の6割が県外に就職している。人口減が続く紀南にとって、県外流出を防ぐのは大きな課題である。

 就職活動は「売り手市場」が続く。紀南の合同企業説明会でも、参加企業は増えているが、来場者は減少している。

 なぜ、若者は地元企業に興味を示さないのか。要因の一つが企業との接点のなさである。若者は地元にどんな仕事があるかよく知らないまま、県外に出ていく。Uターン就職という選択肢が初めから少ないのだ。

 だからこそ企業には適切な情報発信を求めたい。それも単なる求人情報ではなく、社会における自社の役割や独自の技術など、企業が何をしたいのかを明確にする必要がある。その上で、将来どんな「やりがい」が持てるのかイメージを伝えることが重要である。

 学生の情報収集はインターネットが主流。スマートフォンに情報を発信できないようでは、存在を知ってもらうことすら難しい。逆にスマホを活用すれば、ウェブ上での面談など、都会に「地域の生の声」を届けることができる。

 学生には現場を知ってもらい、企業は学生の適性を見極めるインターンシップ(就業体験)も有効である。都市部では多くの企業が取り入れているが、紀南ではまだまだ導入例が少ない。

 働き方の見直しも必要だ。ブラック企業には人は集まらない。休日や残業、勤務への配慮などを若者は注視している。労働人口が減少しているいまこそ、働き方改革を進める好機と捉えたい。

 例えば、田辺市の林業会社は1日6時間のフレックスタイム制を導入、出勤時間も出勤日も自己申告で決めている。そうした努力で毎年、着実に人材を確保している。移住希望者に的を絞った求人も展開しており、18人の社員中、Iターン者が5人もいる。

 田辺市内の会社に勤務して2年目の女性(25)は「地元で働きたいという若者は多いけど、公務員以外に就職先のイメージが持てない」と指摘する。自身は学生時代にまちづくり活動に携わったことで、多彩な仕事を知り、地元で暮らすイメージが強まったという。

 若者の選択肢に「地方」「地元」が加わるよう、自治体も動きだした。田辺市は和歌山大学と連携し、2018年度から市内の若手経営者らと学生が気軽に交流できる場づくりを始めた。19年度は、地方で暮らす魅力を伝える講義を和歌山大に設け、200人以上が受講している。

 学生からは「地元にも面白い人がいる」「地方だからこその利点がある」などの声が寄せられている。受講を機に田辺市で就業体験をしたり、就職先に地元を選んだりする学生も出てきた。

 私たちにできることもある。自分の暮らす土地に誇りを持ち、生き生きと暮らす姿を見せることである。言葉ではなく、その姿が何よりのアピールになる。(K)