和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2020年09月21日(月)

ガンバ大阪、“ファン化”を加速する「デジタル戦略」の裏側

大阪の鳥「百舌鳥(もず)」を伝統の象徴である盾形にアレンジした、ガンバ大阪のエンブレム
大阪の鳥「百舌鳥(もず)」を伝統の象徴である盾形にアレンジした、ガンバ大阪のエンブレム
 デジタル技術の活用により進化の一途をたどるスポーツ業界。とくにチケットの電子化は、利便性の提供、不正転売の防止だけでなく、マーケティングの向上にも寄与。データの有効活用により、パフォーマンスやサービスに磨きがかかっている。Jリーグも同様、「JリーグID」という会員データベースを整え、集客数は近年右肩上がり。なかでも、大阪・吹田を拠点とするガンバ大阪(以下、ガンバ)は、このJリーグIDを基にした顧客データ分析から新たな視点でファン作りに挑み、昨シーズンの平均入場者数はJリーグ3位、チームとしては歴代最多となる2万7708人(前年比118%)を記録した。ファンの愛着心を高めるガンバの取り組みとは?『第12回 Japan マーケティングWeek夏』(東京ビッグサイト・9月2日~4日)で行われた講演会の模様をレポート。

【画像】ギリシア神話ゼウスの生まれ変わり…マスコット「ガンバボーイ」

◆顧客データ分析に基づく「組織と意識の改革」と「顧客ニーズの把握」

 19年シーズン、チームとして歴代最高の平均入場者数を叩き出したガンバだが、この数字は順風満帆に達成できたわけではない。15年までは、万博記念競技場というキャパ2万人のスタジアムで活動していたこともあり、チーム自体は強く人気選手がいながらも平均入場者数は約1万6000人と、Jリーグ全体の平均を大きく下回っていた。しかし、16年に現在のパナソニック スタジアム 吹田にホームを移すと、新スタジアムの目新しさもあって、同年の平均入場者数は2万5342人に急増。

 このまま上向きに進むかと思いきや、17年、18年と1000人ずつ動員数が減少。チームの成績が中位に甘んじるようになってしまったことも危機感に拍車をかけ、18年の夏ごろから、今一度集客方法の見直し・取り組みをスタートさせた。そして、顧客データ分析に基づく施策を講じることで、約1年で見事結果を出すことに成功したのだ。ガンバ大阪の顧客創造部 企画課 集客イベント・デジタルマーケティング責任者の竹井学氏は、この成功の裏には「組織と意識の改革」と「顧客ニーズの把握」、大きく2つの戦略的取り組みがあったと語る。

◆目標を明確に&共通認識を持つことで、配置換えすることなく改革に成功

 まずは、「組織と意識の改革」について。ガンバでは、【ホームタウン担当】【チケット担当】【ファンクラブ担当】と3つの部門が集客にかかわっている。集客数を伸ばすという目標は同じでありながら、以前は【ホームタウン担当】はホームタウン応援デーのチケット販売枚数、【チケット担当】は各試合のチケット販売枚数、【ファンクラブ担当】はファンクラブ会員数・年間席数というように、各部門で独立した数値目標を持ち、施策を行っていたという。竹井氏は、そこにJリーグIDを活用した顧客データベースの分析を導入することで、改革を促そうと行動に出た。

 有効活用ができていなかった以前は、「いつ」「どの試合に」「どんな人が」「誰と来ていたのか」というように、“サポーターの顔”をしっかりと捉えることができておらず、それゆえに適した施策を打つことができていなかったり、3つの部門同士の連携が取れていなかったりした。しかし、顧客の情報を把握できるようになったことで、各部門の役割と目標が明確化。加えて、「顧客育成(顧客数×来場回数)」という集客のコンセプトを作成できたことから、関係スタッフが共通意識を持ち一丸となって目標実現に向けてアクションを取れたという。

「組織そのものや担当者は変えていません。当初は試行錯誤で失敗も多かったですが、結果を出せたことでスタッフの自信にもつながりました。パナソニック スタジアム 吹田は、ファンのみなさんに寄付をいただき建てられたもの。クラブの長期目標としては、さらに集客を伸ばし『常に満員のスタジアムにすること』を掲げています」(竹井氏)

◆顧客の本質的ニーズを見つめ直し、5つの年間シリーズイベントを展開

 次にもう1つの取り組みである「顧客ニーズの把握」について。スポーツ業界では「チームが勝たないとお客さんは来ない」ということが、まことしやかに言われてきた。竹井氏も半信半疑ながら、実際にそのように感じることもあったという。しかし、JリーグIDを活用したマーケティングに注力するようになってからは、本質的ニーズは「家族や友だちなどの大切な人と楽しい時間を過ごすこと」にあるのでは?という考えに至り、レジャー感覚で楽しんでもらえるような5つの年間シリーズイベントを組んだ。

 もちろん、ここでも顧客データを活用。シーズン序盤は全顧客に向けて。レジャーシーズンであるゴールデンウィークから夏にかけては、新規~ライト層を中心に。秋口の終盤戦は、ミドル・コア層を中心にしながら新規顧客のリピート化を促進するような取り組みを。単に何か楽しいことをやっていれば良いだろうということではなく、意図を持ってイベントを配置した。

 昨年5月4日のFC東京戦では、「働くクルマ大集合」と銘打って高所作業車や消防車に無料で乗ることができるイベントを催したところ、集客目標3万人に対し3万4000人を動員。来場者全員に無料でユニフォームを配布するシーズン終盤の企画『GAMBA EXPO』は、17年から3年連続でチケットが完売した。

「『GAMBA EXPO』は、今でこそミドル・コア層に向けて自信を持って行っているイベントですが、実はスタート当初は新規来場者を増やすための施策としてスタートしているんです(苦笑)。データ分析をしてみると、ファミリー向けのイベントでは、たしかに新規・ライト層のお客さまが多かったんですが、『GAMBA EXPO』に関してはミドル層がものすごく多かった。後々、冷静になって考えてみると、そもそもガンバのファンでもない人がユニフォームを欲しいとは思わないよな…と」(竹井氏)

 イベントごとに傾向を捉えられるようになったことで、告知や広告方法も変化。正しい施策を打つことは、費用対効果やコンバージョンの向上につながっているという。ガンバ大阪の成功事例は、数字(顧客)を見える化し分析すること、そして“思い込み”を排除することの重要性を再確認させてくれる。

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提供:oricon news