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かんきつの搾りかすから精油 農業法人が蒸留施設整備

施設内に据えられた精油抽出のための機械。かんきつジュースの搾りかすを活用する(和歌山県田辺市上秋津で)
施設内に据えられた精油抽出のための機械。かんきつジュースの搾りかすを活用する(和歌山県田辺市上秋津で)
 和歌山県田辺市上秋津の農業法人「きてら」は、地元で栽培が盛んなかんきつを使ったアロマオイル(精油)の製造を始める。ジュースの製造過程で発生する搾りかすを活用するため、一石二鳥の取り組みという。さらに研究機関と連携しての商品化も目指す。近年、天然の香料は人気で、新たな事業展開に期待が掛かる。

 きてらは、地元産のかんきつや梅などを取り扱う農産物直売所を運営している。ここで扱う温州ミカンや中晩柑を使い、2004年から生搾りのジュースを加工、販売している。その加工で搾った後の皮は、業者に肥料用に引き取ってもらっているが、より有効に利用できる方法を探っていた。

 14年に化粧品の企画販売や美容院経営などを手掛ける大阪市の会社との共同研究で、皮を搾って精油を抽出し、それを配合したシャンプーやハンドクリームを開発した。その際の抽出は業者に発注していたが、今回は利益が得られるようにと、2月、自社施設をジュースの加工施設に隣接して建築した。

 施設は広さ約18平方メートルで、水蒸気蒸留による精油抽出のための機械を据えた。機械は、熱することで水と香りを気化させ、その後に冷やして液体に戻す仕組みになっている。工場長の坂本登志生さん(57)によると「ジュース加工で出た皮をすぐに使うので品質が良い」という。事業費は1210万円で、そのうち550万円が国の補助金(中山間地域所得向上支援事業)。

 使用するかんきつはポンカン、三宝柑、バレンシアの3種。ジュースでは6種を使っているが、その中から香りが良いかんきつを選んだ。現在、収穫が続くポンカンを使って試運転しており、近く本格的に稼働する。22年には約24キロの製造を目指す。

 出来上がったアロマオイルはそのままでも商品になるが、価値を高めるために関西大学環境都市工学部の研究室と連携し、化粧品や食料品、グッズなどの商品化を目指す。研究に当たる副学長の山本秀樹教授は「今は天然の香料がブーム。上秋津では80種ものかんきつが栽培されており、香料の宝庫。新しい商品を展開していければと思う」と話す。

 上秋津では、旧小学校舎を活用した体験型施設「秋津野ガルテン」を拠点に都市と農村との交流を促すグリーンツーリズムを展開している。かんきつや梅の栽培だけに頼るのではなく、きてらとともに加工や販売も手掛けるほか、農業やスイーツ作り、ウオーク体験などを企画して地域の活性化を目指している。

 香りに着目した今回の事業は新しい取り組みで、きてらの小谷育生社長(69)は「いろいろな会社と連携して商品化し、秋津野のかんきつの香りを全国に届けたい」と話している。

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