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地域活動と医療で子育て支援/「トリプルP」日本に導入/南紀医療福祉センター小児科医/柳川 敏彦さん(65)

やながわ・としひこ=今年3月末まで3年間、県立医大保健看護学部の学部長を務めた。4月以降も、南紀医療福祉センター(上富田町)の小児科医として勤務しながら、県立医大の特別顧問として週2日、大学院生の指導に当たる。趣味は読書と散歩、ネットショッピング。「よく買いすぎて妻に怒られます」
やながわ・としひこ=今年3月末まで3年間、県立医大保健看護学部の学部長を務めた。4月以降も、南紀医療福祉センター(上富田町)の小児科医として勤務しながら、県立医大の特別顧問として週2日、大学院生の指導に当たる。趣味は読書と散歩、ネットショッピング。「よく買いすぎて妻に怒られます」
 県立医科大学(和歌山市)を定年退職し、4月から上富田町岩田の南紀医療福祉センターで小児科医として勤務している。NPO和歌山子どもの虐待防止協会の事務局長を務め、親向けの前向きな子育てプログラム「トリプルP」を日本に導入して広めるなど、子どもに関わる活動と医療との両輪で、地域の子育てを支援している。


 トリプルPは、1980年代にオーストラリア・クイーンズランド大学の臨床心理学教授マット・サンダース氏が、心理学の認知行動療法をベースに開発した。35カ国以上で実施されている親向けのプログラムで、子どもの自尊心を育み、親が楽しく前向きに子育てができるように考えられている。

 柳川さんがトリプルPを知ったのは、2005年にオーストラリアで小児虐待の国際会議に出席した際、虐待を未然に防ぐことに主眼を置いた方法として紹介されていたことがきっかけだった。日本でも取り組みたいとの思いを強くし、帰国後間もないうちにトリプルPの専門書を翻訳して出版、同じ時期に関心を高めていた国立保健医療科学院職員(当時)の加藤則子さんとともに、国内での普及に尽力した。10年には父母ら一般向けの本を加藤さんと一緒に編集した。

 トリプルPではグループで話し合ったり、互いに役割を演じるロールプレイをしたりして、子どもの発達を促す方法や問題行動への対応を学ぶ。この15年間で全国に広がり、今では44都道府県に講師(ファシリテーター)がいる。和歌山市では市が主催し、11年度から毎年、グループワークを年1~4回実施、ほかに講演会やセミナーなども開いている。紀美野町では11年度から毎年開催しこれまで約150人が受講するなど、県内のほぼ全域で取り組みが広がっている。

 今、懸念しているのは、コロナ禍で外出もままならない状況だ。親子とも自宅で過ごす時間が増えると、どうしても子どもを叱る機会が増え、親子関係の悪化につながりかねない。厚生労働省の統計によると、全国の児童相談所が児童虐待として対応した件数は、コロナ禍が始まった19年度は前年度から約3万件増え、過去最多の19万3780件になった。

 「不適切な養育の根本にあるのは、養育者が子育てで孤立し、高いストレスを抱えていること。プログラムでお母さんの子育てスキルが向上すれば子どもの問題行動も減り、お母さんのストレスも緩和され母子関係が良くなる。子育ては日常のこと。特別な人が対象なのではなく、すべてのお母さんやお父さんに知ってもらいたい」と力説する。

 まだ赴任したばかり。病院での診療に力を入れながら、今後は紀南地方でもさらにプログラムを継続的に展開していきたいとの思いを抱く。

 「子どもが小さい間だけでなく、学童期、10代の思春期など、子どもがどの年代であっても子育ての悩みはある。最初の窓口として、ここに相談に来てもらえれば。医療と子育て支援とをつなぎ、両面からお母さんたちが困っていることを一緒に解決していきたい」

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