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樫野のキンカンで加工品 「産地守りたい」と事業継承

キンカンのジュースとピューレを手にする青木寛さん(和歌山県串本町くじの川で)
キンカンのジュースとピューレを手にする青木寛さん(和歌山県串本町くじの川で)
 和歌山県串本町紀伊大島の樫野地区で栽培されているキンカンを使った加工事業を、地元で飲食店などを営む青木寛さん(53)=串本町串本=が始めた。規格外の果実を買い取ってピューレやジュースにしており「高齢化や後継者不足で存続の危機にある産地を守りたい」と青木さん。売り上げの一部を産地を守るための事業に活用する計画という。

 茨城県出身の青木さんは会社員を経てフィリピンで観光関係の仕事に携わった後、2009年に串本町に移住。現在は同町樫野にある「カフェ・ラパン」と、同町くじの川の橋杭海水浴場にある「ビーチハウス・ラパン」を営んでいる。

 串本の「町の木」でもあるキンカンは、太平洋に面したこの地域の温暖な気候が栽培に適しており、100年以上の歴史があるといわれる。

 かつては紀伊大島の各地で多くの人が栽培に携わっていたものの、高齢化が進むなどし、今では樫野地区の5戸のみに減った。以前は規格外の果実もJA紀南が買い取ってピューレやジャムなどに加工。道の駅「くしもと橋杭岩」(串本町くじの川)フードコートで人気のソフトクリームにも活用されていたが、加工場は21年3月に閉鎖されたという。

 このような状況を知った青木さんは、産地を守るために加工事業を継承することを決意。加工場を買い取ることや自分で加工機を購入することも検討したが、予算面などのハードルが高いことから断念し、JA紀南を通じて規格外のキンカンを購入し、県内の業者に外注することで加工事業を引き継ぐことにした。

 ピューレは道の駅で販売するソフトクリームの原料としての活用がメインだが、菓子店などへの販路も模索中。

 さらに、古座川町平井にある農事組合法人「古座川ゆず平井の里」にも協力してもらい、キンカンのピューレを使ったジュース「きんかちゃん」を製造。串本町内にできる発射場にちなみ、ロケットにまたがって「樫」印の鉢巻などを身に着けたキンカンのキャラクターを知人の田中陽一さん(36)=串本町串本=がデザインしてくれ、ラベルに活用した。内容量は160ミリリットルで、価格は220円(税込み)。カフェ・ラパンやビーチハウス・ラパンなどで今月から販売している。

 加工事業の売り上げの1割はキンカン農家を援助するためにストックし、収穫の手伝いや農園の維持、新しい苗木の購入などの費用に充てる計画という。

 青木さんは「規格外の果実が出荷できれば、農家さんはいくらかの収入が維持できる。加工事業でもうけるというより、産地を維持するための応援ができればという思い。加工品の販売や農家さんの手伝い、加工品のアイデアなどでこの取り組みを応援したいという方がいらっしゃれば、ぜひ声をかけていただけたら」と呼びかけている。

 問い合わせは青木さん(090・3356・8305)へ。

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