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「早期発見、対策が重要」 モモや梅の害虫クビアカツヤカミキリ

モモや梅などに被害を与えているクビアカツヤカミキリの雄(右)と雌
モモや梅などに被害を与えているクビアカツヤカミキリの雄(右)と雌
クビアカツヤカミキリの研究に使用する「網室」。出入り口の扉を2段階に設け、鍵もかける(和歌山県紀の川市で)
クビアカツヤカミキリの研究に使用する「網室」。出入り口の扉を2段階に設け、鍵もかける(和歌山県紀の川市で)
 モモやスモモ、梅、サクラなどバラ科の樹木を食い荒らす外来の害虫、クビアカツヤカミキリの被害が和歌山県北部で広がっている。県は対策を研究すると同時に「早期の発見や対処が重要」と啓発に力を入れている。県果樹試験場かき・もも研究所(紀の川市)で対策を聞いた。 (湯川優史)


 クビアカツヤカミキリはつやのある黒色で、前胸が赤いことなどが特徴。幼虫が樹木を枯らす。

 全国的に分布を広げ、県内でも4月末時点、かつらぎ町、橋本市、九度山町、紀の川市、岩出市、和歌山市のスモモ、モモ、梅計158園地で533本の被害が確認されている。

 かき・もも研究所の弘岡拓人主査研究員(35)は「和歌山県のモモやスモモ、梅の生産において、おそらくかつてない危機に直面している」と語る。

 県は防除技術の確立などを目指し、国や他県の研究機関と連携し、かき・もも研究所やうめ研究所(みなべ町)、林業試験場(上富田町)の3施設が研究している。

 この虫は国から「特定外来生物」に指定されており、飼育や保管、運搬などは原則禁止。そのため、県は環境省の許可を得て、かき・もも研究所や農業試験場(紀の川市)の施設を研究場とした。

 クビアカツヤカミキリに使える登録薬剤は増えてきているが、ふ化した幼虫が木の中に入るのを防ぐ方法や、成虫の産卵抑制効果があるかどうかなどを詳しく調べ、主に農業試験場で薬剤試験をしている。

 早期発見につなげるため、少量のフラス(幼虫が排出する木くずとふんの混ざったもの)で、クビアカツヤカミキリによるものかどうか見分ける分析法も研究。木に巻くネットや保護資材などを使った防除方法についても研究している。

 これまでに分かってきたのは、室内試験においては登録薬剤の散布が成虫の生息密度を下げる効果が認められているが、それだけでは被害を完全に抑えきれず、「掘り取り」といって幼虫を見つけ出して、殺すことが重要だという。

 幼虫の期間は1~3年で、その後、さなぎになる時に木の芯に入ってしまうため、幼虫がいる痕跡であるフラスをいち早く見つけ、マイナスドライバーなどで樹皮を剝ぎ取り、幼虫を針金で刺殺するなど、樹皮直下にいる幼虫の時点で対処することが大切になる。

 卵を産むのが早く、繁殖力が非常に強い。成虫の移動距離は年間2~3キロとされる。県外の他産地では、壊滅的な被害を受けた園地もある。

 弘岡研究員は、分布の拡大には、クビアカツヤカミキリが入った木材を運搬したり、車に付いていたり、意図しない人為的な要因も考えられるといい「紀南地方はこれまでのところ被害が確認されていないが、いつ発生してもおかしくない。危機感を持って、早期発見や対策を意識してほしい」と呼びかけている。

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